凱旋
二日後。
都市の方では再びパレードが行われていた。しかも、ミトラが訪れた時よりも、大きく、盛大なものであった。行き交う人々の顔は全員が幸福に満ちていた。
やはり、最初のパレード時には不安な者が多かったのだろう。本当にミトラが厄災を打ち倒せるのか?ここで自分たちは街と一緒に死ぬしかないのではないか?と。
だが、彼女はちゃんと厄災に打ち勝ち、街の人、全員を救ったのだ。
立ち去った人々も戻り始め、このお祭り騒ぎに乗じて色んな商人もやってきている。街道に並ぶ屋台には見たことのない異国の食べ物、商品が置いてある。
パレードの中心はやはり、剣聖ミトラであった。
「ありがとう!」
「アンタは本物の英雄だ!」
彼女に多くの人たちが声をかける。
その言葉を聞いて嬉しくならないはずがない。ミトラの表情もどんどん笑顔へとなって行く。しかし、少しだけその顔は曇っていた。どんなに賞賛の言葉をかけられようとも、納得のいかない、自分だけの成果ではないという、気持ちが心の隅っこに残り続けていた。
(本当は私だけの力じゃないのに……)
彼女は隣を見る。
そこには誰もいない。
しかし、本来であれば居るはず。居なければいけない人物がいるのだ。
(トーゼツ……アナーヒター…………)
それは、厄災を討伐した次の日。つまり昨日のことだ。
彼女は目覚めると、ベッドにいた。
街の病院であった。
彼女を運んできたのはエルフの少女と一人の少年だったという。彼らは名前を言わずに、「ミトラは厄災に打ち勝った。ボロボロだったのを運んできた」とだけを」残して立ち去ったという。
ミトラは自分だけの力ではない、メユーという偽名を使って弓士をやっていたアナーヒターと、職を持たない勇敢な少年、トーゼツの二人が助けてくれたおかげだ、と説明した。
だが、誰も信じなかった。
一人は神の祝福を持たない無職の少年で、決して頼れる者ではない。また、彼の相棒であるメユーが、術聖であるアナーヒターなわけがない。と言われてしまった。
きっと、激しい戦いのあとで記憶が曖昧で、何かと混同しているのだろう。そう説得されてしまった。
だが、ミトラはそうではないとはっきり言えた。
「あの二人こそ、賞賛を受けるべきなのに……一体、どこへ行ったのよ…?」
ミトラは、あの二人を想い、空を見上げる。
そこは、セイヘンの国境の外。厄災と熾烈な戦いをした場所を超えた南の道。それは、南方諸国へと通じている道であった。
そこを歩く二つの影。
「本当にあの街に残らなくてよかったの?」
耳の長い、エルフの少女が少年へと尋ねる。
「ああ、これで良かったんだよ、アナーヒター」
「ちょっと、その名前は今はやめてよ、トーゼツ」
「おっと、悪い、メユー」
彼は思わず本名で呼んでしまったことを深く謝る。
「きっとミトラと一緒に居たら、お金も、名誉も得ていたわよ。アンタの目標って英雄とか、勇者になることでしょ?なのに、それを投げ捨てたのはどうしてなのよ?」
それに対し、トーゼツは迷うことなく答える。
「いいや、違うね。俺の目標は、物語に出てくる英雄とか勇者になることじゃない。彼らのように人を助ける事、これが俺の目標だ。もちろん、俺も人間だからな。お金は欲しいし、名誉も、賞賛もあれば嬉しいし、気持ち良いことだ。でも、やりたいことじゃない。今回の戦いで、俺たちは厄災を倒せるレベルの実力があるのが分かったんだ。だったら、次の厄災討伐に向けて動く!俺たちが多くの人たちから英雄視されるのは、全ての厄災を討伐し終えてからだ!」
「……そうね、アナタらしい答えね。だったら、何処までもついていくよ!」
「そういってもらえると嬉しいぜ!っしゃ、旅の目標も決まったんだ。とりあえず、次の国に向けて進み続けるとしよう!!」
そうして、二つの影は歩みを止めず、進み続けるのであった。
今後も、諦めず、目の前の障害を打ち勝ちながら。




