破滅 13
調和神アフラもサルワの行動を見て、少し警戒をする。
サルワの体を巡る力の流れを見て察知する。
厄災にはそれぞれ自身の権能にあった力を最大火力で放つ技を持っている。例えば、憤怒の約差は〈アクゼリュス〉という技を。支配の厄災こと、サルワは〈コーキュロー〉と言った技を。それらはまさに彼らを生み出した悪神の持つ力に最も近く、神術に近い技術だ。
今のサルワであれば、それをより高火力で出すことぐらいは可能だろう。
しかし──
(厄災の権能を同時に二つ発動……。無茶としか思えないのですが──)
どれだけ化け物じみた力を持っていても、元はただの人間の肉体。今でこそ自由に動き、暴れ、混乱をもたらしているが、冷静に考えるとサルワは厄災の力に対し適応出来る肉体を持った人間を支配し、操っているだけなのだ。
無論、サルワは自身の力を強化するにあたって、操っている肉体の強化も図っていることだろう。さすがにそれを考えないほどバカではあるまい。
それでも、今の肉体の状態で二つの厄災の力を、同時に放つなど無茶すぎる。
だが、本当にそうだろうか。
サルワはここまで半分以上の厄災の力を手に入れた。その過程は決して計画的とは言えなかっただろう。大雑把で、行き当たりばったり。時には上手くいかなかったことも多々あったことだろう。
しかし、結果的には上手くいっていた。
神都を破壊し、天玉仙帝を倒し、厄災の力の強化も、取り込んで吸収することも出来ている。
それは彼女がどんなに無計画な行動を取っても、引き際を知っていたからだ。ここから先に踏み込んではいけない所を理解していたからなのだ。だからどんな危ない目にあっても、彼女はまず生き残る事を先決していた。戦いに勝つことではなく、次に繋ぐ行動をしていた。
であれば──
「考え無しの行動ではないかもしれない。でも、ここで退くわけにもいかない!人類のために、この世界のために……ここで消滅するのです!支配の厄災、サルワ!!」
思いっきり振り下ろされたレヴァレ・ケルムからこれまで以上の力で世界を歪めていく。
それに合わせて、サルワも詠唱を開始する。
「〈其れは森羅万象、全事象を支配する力!あらゆるモノを自身の思い通りに捻じ曲げる精神である〉!〈我は刃の厄災。争いの象徴である其の刃は全てを斬り裂き、殺し尽くす〉!」
セプターと大剣、この二つに調和神アフラに引けを取らないレベルの超高密度のエネルギーが纏わり、今、放たれんとしていた。
「〈コーキュロー〉〈エスターブ〉!!!!!」
調和神アフラのレヴァレ・ケルムが放った、物理世界上にある万物、概念を含めたあらゆるモノを崩壊させる歪んだ一撃と、支配の厄災ことサルワが対抗するために撃った二つの神術レベルの技がぶつかり、激しい音と衝撃を周囲に散らせていく。




