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破滅 12

 サルワはその一瞬の事を理解出来ず、ただ眺めることしか出来なかった。


 「何、が……」


 ただ槍を振っただけ。それ以外は何もしていなかったはずだ。


 なのに、四方八方、あらゆる攻撃を無効化した……?


 (威力は感じなかった、魔力も一切、使っていなかった……一体、何をしたんだ、アフラは───


 「さて、今度はこっちの番だぞ」


 調和神アフラは神槍しんそうレヴァレ・ケルムを構え、思いっきり上から下へと振り下げる。


 「ッ!!」


 嫌な気配を感じたサルワは支配の力で周囲の万物全てを支配し、操作する。


 その時だった。


 振り下ろされた先の空間が歪み、物質が消滅し、あらゆるモノ全てが掻き消えていく。


 その歪みはサルワの前で停止する。きっとそれは彼女の支配の権能が受け止めてくれているのだろう。しかし、徐々にその歪みはサルワへと近づいていく。


 (分からない、なん、だ……この力…は…………?)


 無限のようにエネルギーで押し切るのであれば分かる。ありえないほどの破壊力で押し潰そうとするのであればまだ分かる。理解できないような魔術、神術などの知識や技術で支配の権能を押し超えようとするのであればまだ納得出来る。


 だが、これはどれでもない。


 「万物、概念を含めたあらゆるモノを操作するアナタでも、この力に抵抗は出来ないでしょう!!」


 調和神アフラはさらに槍を振い、さらにサルワへと追撃を放つ。


 「ッ!!!!」


 耐えきれなくなったサルワにとうとう、レヴァレ・ケルムの力が到達し、胴体に大きな斬り傷を作り出す。切断、まではいかなかった。が、その姿は今にも下半身と上半身が外れてしまいそうであった。


 サルワはすぐさま肉体内部にあらゆる細胞を支配し、再生を図る。


 破損した細胞同士が分裂し、お互いを補っていく。切れた血管が繋がり、血液の循環を再開する。千切れた神経細胞、筋繊維も修復し、どんどん元の姿へと戻っていく。


 「一秒も経たずに完治ですか。もう少し、深い一撃を放つべきでしたね」


 調和神アフラはレヴァレ・ケルムに魔力、神の力を込め、もう一度、放つ準備を行う。


 「嘘だろ……あれが最高火力じゃないのかよ…………!」


 最初は軽く力を試すだけのつもりだったのだが……これじゃあ、こっちがサンドバックだ。


 あの槍の一撃は防御系の術じゃあ守り切れないだろう。避けることも不可能と見た。であれば、同等の力を持った攻撃で相殺するしかない!


 「俺の最大火力で迎え撃つ!!」


 サルワは両手に魔力を送り、形を与え、具現化する。


 右手にはこれまでも使っていた、支配の厄災としての象徴であり、ギラギラと宝石で宝飾された、悪質なほどに輝くセプター。


 左手には決して常人であれば片手で持つことは不可能だろうと思えるほど巨大な一本の大剣。それは刃の厄災の象徴である大剣であった。

 

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