破滅 11
トーゼツの想いの力をかなり吸収した調和神アフラの力は二千年前、三千年前ほど昔のレベルまで力が戻ってきている。であれば、厄災の力程度に負ける道理はないはずだ。
しかし──
「ッ!!」
地面に違和感を感じた調和神アフラは急いで飛び上がる。すると、すぐざま地面から無限のような刃が竹のように生えて彼女に襲いかかる。咄嗟に回避はしようとしたものの、全部は避けきれず、腕や脚、頬の先を掠り、全身が切り刻まれる。骨や臓器に到達することはなかったが、あちこちの肉が斬られていく。
膨大なエネルギーを身に纏っていたというのに……。
(これは刃の厄災の権能ですか!!)
足元の地面、全ての物質を鉄へと変換、そのまま剣や刀のような刃の形を与えたということか。それだけでも現代の魔術学では解析不可能な技術なのだが、それよりも驚くべきなのはこの鋭さである。
調和神アフラの体に傷をつけたのだ。しかも、刃一本、一本には魔力は込められているが、あまりにも微小であり、これで彼女に傷をつけられるとはあまり思えない。が、実際には傷をつけた。
それは魔力による威力ではなく、刃そのものの鋭さ、力が凄まじいことの証明であった。
「完全に串刺しにする気だったが……良い反応だな」
とサルワは自分の思ったような結果にならなかったことを少し悔しがっている様子であったが、調和神アフラはの顔には変わらず焦りや緊張と言った感情がそこにはあった。
(この出力は明らかにオリジナルである刃の厄災を超えてきている!)
そこに追撃と言わんばかりに更なる量の刃が地面から襲いかかってくる。
それを調和神アフラは難なくレヴァレ・ケルムで薙ぎ払い、一瞬で全ての刃を破壊していく。
(とはいえ、私の敵ではない!!)
トーゼツの時は手加減していた。自身の計画を、人類の将来を……この世界の未来を考えていた故に手加減をし続けていた。しかし、今は手加減する必要もない。
本気で行く。じゃなければ、こちらがやられる!
「クカッ、ハハハ!!!!良いねぇ、素晴らしい力だッ!これは私の予想以上……まさにサンドバック以上だぞ、調和神アフラァァァ!!」
四方八方に刃が出現し、その全てが調和神アフラへと向けられている。それだけではない。サルワはジャラジャラと鎖を具現化し、魔力球を生成する。それら全ての攻撃を一斉に放ち、あらゆる攻撃、あらゆる方向、あらゆる力が調和神アフラへと襲いかかる。
が、彼女は動じない。
支配の厄災こと、サルワを今、ここで確実に──
「殺す!!」
レヴァレ・ケルムの出力を現状可能なレベルまで引き上げる。その瞬間だった。
それはただの一突きであった。
恐ろしいほど眩しい光も、鼓膜が破れてしまうような音もなかった。
ただ──一瞬で全ての攻撃が霧散霧消していく。