破滅 10
創造世界に溢れていた泥が外の物理世界へと流れ出し、外郭となっていた黒い膜がガラスの破片のように散っていく。それと同時に内部にいた調和神アフラとトーゼツの二人も吐き出される。
「ハハハハハッ!!やっぱりお前ら二人か!!」
そこに現れたのは一人の女。
ドラゴンのような二本の角に悪魔のような赤い瞳。歯はまるで獣のように伸び切っている。
そう、倒すべき十五の厄災の一人であり、調和神アフラの計画外の存在。
支配の厄災こと、サルワであった。
「良いねぇ、姉弟揃って最高だ!!アナトに比べて凡夫だと思っていたが、やはり何かを持っていたようだな。しかし、見た感じ暴走していると見た。それはとても頂けない。だが、それよりも──」
サルワは調和神アフラの方へと目線を向ける。
「消滅したって聞いていたんだけど……どうしてこんな所にいるのかな?」
それに調和神アフラは答えない。
それを尋ねるということはまだサルワは到達していないのだ。このトーゼツが抱えている力に。そして固有技能の仕組み、その正体に──
「まぁ、良い。私の力がどれほど成長したのか。試し相手にちょうど良い」
「くだらない冗談を言いますね。私たちがアナタのサンドバックになれるとでも?」
肉体にエネルギーを纏い、片手にレヴァレ・ケルムを握り、アナトを睨みながら戦闘態勢を取る。
「クハッ!確かに、サンドバック以下かもなぁ!!」
サルワは魔力から一本のセプターを具現化し、調和神アフラへと突っ込んでいく。
ドォンッ!と莫大なエネルギーが激しくぶつかり合い、強い衝撃となって周囲を荒らしていく。瓦礫が散り、泥が跳ね、でこぼこになった地面に亀裂が奔る。
「はっはァ!全力の一撃を相殺するとはね!天玉仙帝以上の実力を持っているのは確かみたいね!」
サルワのお眼鏡に叶ったのか。彼女はとても嬉しそうに嗤い飛ばす。
調和神アフラと違い、天玉仙帝は弱体化などはしていなかった。無論、神代の頃よりは弱くなっていたかもしれない。しかし、彼はこの国を建国してから今までずっと支配してきた。そして、数多の敵を倒し、伝説を作ってきた。その実績があるからこそ、国中の民と部下から信頼されてきた。仙人であると信仰されていた。そんな天玉仙帝よりも、大幅な弱体化してしまっている調和神アフラの方が強いというのはかなりの褒め言葉である。
だが、調和神アフラの方は嫌な汗が流れ、表情に緊張の色があった。
「ッ!予想以上のパワー……!私の思っていた以上に成長が早い!」
厄災の力を半分以上を取り込んでいるとはいえ、これほどの出力。それに支配の権能も神都侵攻時よりも成長している。古代の神々に引けを取らない……いいや、それ以上かもしれない。
そのうえ、まだ成長の可能性が残っているのが恐ろしい。
(やはりここで倒さなければ──!)
調和神アフラはセプターを押し返し、態勢を立て直す。