破滅 6
視点は戻り、そこは暴走し続けているトーゼツの場所。
トーゼツの周辺には血肉が落ちていた。
右腕に左腕、脚に眼といった箇所まで……。血の量だって、本来、人であれば死んでいてもおかしくはない量の血で溢れている。
というのに、トーゼツは五体満足でそこに立っていた。
いいや、落ちている血肉は全部、トーゼツのモノであったのだろう。その部位がまるでトカゲの尻尾のように生えてきてきたのだ。彼の固有技能である『不屈の魂』 の力によって……。
また、『不屈の魂』の影響で魔力量も増加しており、調和神アフラと戦闘を始めた時よりも圧倒的に多いエネルギー量がトーゼツを中心にまるで嵐のように渦巻いている。
「ここまで痛めつけても倒せないとは……。しかも、エネルギー量も増えていますね」
調和神アフラが本気を出せば、トーゼツの事は簡単に倒せることだろう。しかし、彼女の目的は彼を殺すことではなく、正気を取り戻させること。
このままでは、暴走を続けるトーゼツに肉体が持たない。
さて、どうするべきなのか……。
頭の中で思考を巡らせているその最中、トーゼツが動き出す。
「ウッとお…しイ!!蹴散らセてヤル!!!!!」
暴走中とはいえ、自身の扱う想いの力を操作するのに慣れてきたのか。先ほどまで自身の魔力に想いの力を肉体強化をメインに使っていた。が、ここに来て空中にエネルギーを集め、まるで弾丸のようにしてあちこちへ無差別に放ち始める。
既に瓦礫と化していた周囲の建物は放たれたエネルギーの熱量によってドロドロに溶け、文字通り、跡形もなく消滅していく。また、舗装されていたとは思えないほど地面もボコボコになっており、人はおろか、獣ですら歩くことがままならないほどの地表へと変わっていく。
調和神アフラは持っていた神具レヴァレ・ケルムによって薙ぎ払い、エネルギー弾を消滅させていく。だが、薙ぎ払っても、薙ぎ払っても、そのエネルギー弾は絶えず向かってくる。その圧倒的な物量攻撃に凌ぎきれなくなり、とうとう一撃喰らってしまう。
「ッ!!」
体勢をすぐさま立て直し、レヴァレ・ケルムを持ち直す。が、その時にはもう目の前に新たなエネルギー弾が襲いかかってきていた。それを咄嗟に躱す。
「ハハハハハッ!!!まだ、マだァ!!!!」
さらにトーゼツはエネルギー弾の生成、発射の速度を上げていく。
それを調和神アフラはひたすら躱し、躱し、躱していく。一部、躱しきれないと判断した攻撃はレヴァレ・ケルムで薙ぎ払う。
「はぁ、はぁ!」と激しい息切れをする。
彼女の肉体もまた、想いの力で具現化したモノだ。実体こそあれど、本当の血肉などではない。ゆえに呼吸も必要ではないのだが、この触れれば一瞬で終わるかもしれないこの状況。緊張、不安、焦りなどによってメンタルに強い負荷がかかっているゆえに起こっている無意識の呼吸なのかもしれない。




