破滅 5
天玉仙帝の中からどんどん厄災の力が抜け、逆にサルワの力がどんどん増していく。
「おいおい、嘘だろ……」
ここまで来て、サルワはさらに驚く。
「コイツ、三つも厄災を取り込んでいたのかよ…………!!」
さすがのサルワもそこまで感知はしていなかった。だが、これはこれで僥倖だ。まさか一気に自身の能力強化が進むとは……。計画の進行がかなり早まった。
「鋭先に、色欲、病障の厄災か……、良い力だ!クククッ、何百年か、何千年かは知らないが、永い間、封印されていた兄弟たちよ。力を振るう時が来たぞ!!!」
サルワの頭に生えたまるでドラゴンのようなツノがグググッ!と少し伸びて、成長していく。目の色も、
どんどん薄い赤色、ピンク混じりだった眼が血液のような赤色に染まっていく。
まだ人寄りだったサルワの姿が、まさの神話に出てくる魔王、悪魔といった容貌へと変化していく。
サルワの肉体はもとより彼女のモノではない。アルウェス率いる黒いローブの集団が、支配の厄災を取り込み、自身の力にしようとした事がキッカケで受肉したのであって、元々サルワこと、支配の厄災は肉体を持たない。この『彼女』というのも、元の肉体が女性だから出会って、サルワ自身には性別なんてないのかもしれない。
そんなサルワの肉体が厄災の影響で変化しているのだ。もしかしたら、古代の神々すら圧倒した邪神へと近づきつつあるからなのかもしれない。
「は、はは。ははははははははッ!!力が漲ってしょうがない!天玉仙帝などを遥かに超えている力!!アナト、アムシャに届き得るぞ!!!」
これでサルワの中には多くの厄災が取り込まれた。
憤怒、色欲、強欲、傲慢、寒冷、病障、刃、先鋭、死。
そして、イルゼ、ファールジュの中に宿っている。
合計十柱以上の厄災が手元にある。
「残りは怠惰、暴食、温熱、旱魃、疑心の四つか……」
この四つも何処にいるのか。その所在は既に分かっている。取り込む算段も整っている。それよりも──
「おいおい、これほどの力をもう持っているというのに、まだまだ四つも兄弟が残っているなんてな!!!クククッ、ははははッ!私は何処まで強くなれるというんだ!?」
それに、取り込んだ力を使いこなせるように訓練することでさらに成長することが出来る。自身が最初から持っていた支配の権能も自分が想定していた以上に成長した。一体、自分は何処まで届くのか。人類最強のアナト。最後にして、神々の守り手であるアムシャ。この二人を超えて、さらに誰も到達したことのない領域まで到達出来る。自分の限界なんてあるのだろうか。
さらに、厄災を取り込む以外に成長する方法もある。
「さて、新たな力を試したいことだし──」
サルワはとある一方を眺める。
そこは先ほどから強い力を感じる方向であり、気配そのものはかつて感じたことのあるモノ。
トーゼツのいる方向であった。
「帰還する前に遊んでいくか」