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破滅 4

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 再びサルワと天玉仙帝の周囲には静寂が訪れる。その静寂が本当に二人の戦いが終わってしまった事を説明しているようであった。


 サルワも全力を出し切ったからなのか、視界が暗転し、ぐらりと体勢を崩す。しかし、まだ休む時ではない。彼女は意識を強く持ち、体に強い力を入れて立ち上がる。


 ゆっくりと、しかし確実に天玉仙帝へと近づく。


 「……まじかよ」


 死んだかと思われていた仙帝には、まだ息があった。意識はない。欠損した右腕に、〈キムラヌート〉によって作られたであろう胸部の巨大な傷。耐えず血が流れ出ているが、確かにまだ生きている。


 「このまま殺すか……?いいや、まだ使えるかも」


 将来、この世界を支配した時、使える部下となるかもしれない。


 まぁ、正直に言う事を聞いてくれるとは思わないが……。支配したいからと言って自分はイエスマンだけを置くような愚か者ではない。こういう人材こそ必要になってくるかもしれない。


 「利用したくなっても……失くしたモノは戻ってこないからな」


 今回の戦いを以てもなお、抗い、に戦うような事があれば……その時に殺せば良い。


 「今は目的を果たすべき…!!」


 サルワは倒れる天玉仙帝へと強く意識を向ける。


 十五の厄災のほとんどは所在が分かっていた。歩くだけで生命を狂わせ、魔物化させる。四大聖であっても勝てる者はほとんど居らず、百年単位で国をも滅ぼしていくまさに災害であった。だがその大きな存在感があったゆえに、何処に厄災が居て、次の活動周期にどのように動くか、予測は既に行われてきた。


 しかし、一部の厄災はその存在を確認することが出来ず、多くの国家や機関が探していた。それに対し、サルワもまた支配の厄災。他の厄災が何処にいるのか、必死に探さなくてもなんとなく、残りの厄災が何処にいるのか、感覚的に分かっていた。


 それは北極や活火山付近などのまさに人が立ち入らない秘境、過酷な環境にいた場合もあった。だが、それらは研究者であっても予測出来ており、いずれ人にも見つかっていた事だろう。


 しかし、残りの場所はどれだけ探しても見つからない場所にあった。


 それは──


 「クククッ!お前も大概だな、天玉仙帝!!」


 右腕から右手、指先へと厄災の力を流す。そして天玉仙帝へ向けてその右手を強く差し込む。


 その瞬間だった。


 天玉仙帝の体からサルワと同じ厄災の力が流れ出す。まるで決壊したダムのように、留まる事なく、それは吐き出ていく。


 「まさか、自身の中に厄災を取り込むとは……!」


 アルウェス、イルゼにファールジュ……厄災を取り込み、自身の力として扱う者は多々いた。そして天玉仙帝もまた厄災を取り込むことが出来る素体であったというだけの話。とはいえ、厄災を取り込んだ者たちは全員、厄災の力によって精神変異を起こしていた。常軌を逸した思考するようになっていた。その兆候が無かったのは彼が神の力を持っているからなのか……。


 だが、今はそんな事、どうでも良い。


 天玉仙帝が自身の中に隠していた厄災を取り込むこと、今、必要なのはそれだけだ。

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