破滅 3
サルワはより自分の持つ厄災の力、魔力を魔法陣へと送り始める。空中に展開していた魔法陣の中に描かれた図形に文字が動き出し、まるで機械の歯車のように呼応して回り出す。
そのサルワの動きに合わせて、天玉仙帝もまた、魔力弾の回転数を跳ね上げる。
二人は睨み合う。
サルワに合わせて天玉仙帝も魔力弾を放つつもりなのだろう。
自分たちの運命……いいや、世界の運命がどうなってしまうのか。まさに歴史的瞬間が決まってしまうこの状況にただ二人はタイミングを狙う。
そして、とうとうサルワが詠唱を開始する。
『浄化の先、同化する世脆、そこに揺らぐ答えを視た!穿て!!』
「〈キムラヌート〉!」
魔法陣から飛び出したのは、見えないナニカ。しかし、見えないそれは確かにそこにあるのだと証明するかのように空間が歪み切っている。まるで蜃気楼のように……熱によって空気が揺らいで見えるかのように、実態は見えない莫大なエネルギーが歪んで見える。
それに対し、「ふんッ!!!!」と力強く魔力弾を放つ天玉仙帝。
二つの力が徐々に近づき、とうとう衝突する!
莫大なエネルギー同士の衝突は凄まじいもので、漏れ出たエネルギーが全て熱にあり、風になり、破壊力となって周囲に散っていく。大地が割れ、瓦礫が吹っ飛び、サルワと天玉仙帝もその場に留まるので精一杯であった。
(貫通……出来ない…………のか!?)
天玉仙帝は肉体に残ったエネルギーを搾り取り、放った魔力弾へとさらに送る。それは本当に搾りカス程度の力。それでも貫通力の底上げは出来るだろう。
グググ、と〈キムラヌート〉が押し下がっていく。
「何度も言うけど、往生際は良い方が見栄えするぜ!!!」
サルワも負けじと魔力を送り込む。
今回、サルワが放った〈キムラヌート〉は本来、敵を破壊する事を目的とした術だ。しかし、今回においては魔力弾に貫通させないようにすることが重要であった。そのため、より硬度を意識して放った。それにより威力は落ちてしまった。それが仇となったか。魔力弾を相殺することも出来ず、押し上げることも出来なかった。
変わらず状況は拮抗している。
だが、残存するエネルギー量、パワー、精神的余裕に肉体的余裕……あらゆる事を考慮するならば、この拮抗状態、どちらが先に崩れるか簡単に分かる事だろう。
「ッ!!!」
一センチ、魔力弾が押し戻される。
次の瞬間、また一センチ。
サルワの表情に笑みが溢れる。
この勝負の結末を理解し、勝利を確信した笑みであった。
そうしてどんどん押し戻され、数十秒後には──
「ッ───────!!!!!」
天玉仙帝は押し戻された自身の魔力弾ごと〈キムラヌート〉を喰らい、これまで感じたこともない衝撃、痛み、ダメージに声にならない叫びを大きく上げる。