表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
525/606

破滅

 視点は戻り、そこは霊霄殿れいしょうでんの周辺。


 あちこちで激しい爆発音が響き、建物がいくつも倒壊し、都市を破壊しながら進んでいたサルワと天玉仙帝の戦いだった。が、今では恐ろしいほど静かで、何もかもが収まっていた。


 この状況は示すモノは、戦いの終わり、勝敗の結果であった。


 「はぁ……はぁ……!」


 肩を大きく動かしながら、激しく呼吸しているのはサルワであった。彼女の体は傷だらけで、切り傷や擦り傷といった浅いモノから肉が裂けて、骨にまで達している深い傷まであった。サルワが治癒魔術が使えるため致命傷が無い事は特段、不思議なことではない。逆に深い傷、浅い傷が残っているということは、そこまで肉体治癒を行う余裕がなかったということである。


 魔力も万全だった状況に比べ、圧倒的に消費してしまっている。今や、絶大レベルの術を一撃放てるかどうかまで消耗してしまっている。


 「ふぅ、やはり仙帝。化け物レベルだな。でも──」


 彼女の見る先には、一つの影。


 右腕が欠損している、今まさに死にかけの状態の男。


 天玉仙帝であった。


 ボロボロになってもやはり仙人をまとめ上げる帝王。身に纏っている魔力、エネルギーはやはり人の身ではありえないほどの量だ。表情にも動揺であったり、焦りの色が見えない。しかし、サルワと戦い始めた直後に比べればエネルギー量は格段に低くなっている。片腕が無いという点も鑑みれば表情も追い詰められている事を必死に隠している表情だと感じてしまう。


 「お前も終わりだ、数千年間、お疲れ様」


 サルワは右手に魔力を集め、空中に巨大な魔法陣を展開する。魔術学の知識があれば誰でも分かる。この魔法陣は絶大級の術式だ。さすがに現在の天玉仙帝では対処しきれないだろう。


 本当に死ぬかもしれないピンチだというのに、彼の表情に変化はない。


 「なぁ……に、まだ。まだまだこれからだ」


 血が絶えず飛び出る右腕の切断面を左手で抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。


 「見苦しい強がりも、ここまでくれば尊敬までするよ。でも往生際が良い方が見栄えするよ」


 「さて、強がりかどうか、試してみるか!!!」


 仙帝は前の前に魔力、神の力、土地から汲み上げた龍脈……自身が操作可能なエネルギー全てを前の前に集約させて、放つ準備をする。


 「まだこれほどの力を……!でも、それじゃあただの魔力の塊。魔力球でしかない。私の術を止められるとは思えないんだけど!!」


 仙帝は基本、拳を使った術を用いて戦っていた。片腕のない現在、術の発動は難しいだろう。無論、魔術のように詠唱、魔法陣を用いた術も使えるのかもしれないが、肉体治癒する余裕もない仙帝が、絶大級の術を展開する余裕があるのだろうか。もしくは、脳の負担が耐えれるだろうか。


 否、出来るわけがない。


 であれば、このまま正面勝負しても勝つのはサルワなのは明白だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ