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内の覚醒 23

 その時、ようやく調和神アフラは理解した。トーゼツの内部で一体、何が起こっているのか。彼女は困惑する。まさか、そんな事がありえるのか、と。


 具現化した肉体が維持出来ないほどの威力、速度で殴られながら自分の至った答えに対して、あらゆる思考を巡らせる。


 トーゼツの中には強い信念と理想があるのを知っている。古今東西、英雄と呼ばれる者たちや物語の勇者に憧れて、だからこそ冒険者として世界を旅してきた。多くの人を助けて、理想の自分になろうとしていた。きっと子供のようで、他人によっては馬鹿らしくも感じるその想いは、とても大切で、持ち続けるのは困難な感情。その彼の想いが膨れ上がった結果、この状況を生み出した可能性がある。


 (ここ最近、理想とはかけ離れた事をトーゼツは行ってきた。人を守り、助ける事を目標としている彼は人を殺し、事件の中心として周囲を巻き込んできた。それを現実と理想は違うと理解してながらも、心の奥底では理想を描けない自分を否定していた。結果、理想の自分と現実の自分に分離し、内部で膨れ上がったその想いの力が暴走している!!)


 きっと今、彼の肉体を動かしているのは理想の自分。


 人を救い、世界を救い、英雄となろうとする大きな意思。


 この調和神アフラが行き着いた答えは半分以上は正しかった。しかし、一部、間違っている点もある。そこに気づいていない事がまさか彼女の計画に大きなブレを生み出す事になるとは誰も思っていなかった。しかし、その点は今は関係のない話であり、現在へと話を戻そう。


 人の身で神へと至れたかもしれない。天玉仙帝を超えて、さらにその先へと成っただろう。それは調和神アフラの計画でも重要事項であり、本来であれば僥倖と喜んでいた所。


 しかし、今、まだトーゼツは未熟すぎている。


 (この暴走状況が続けば、トーゼツは戻れなくなるでしょう!!その前になんとしても──!!)


 休みなく放たれる打撃ラッシュの中、怯まず、退行することなく調和神アフラも負けじと反撃を入れる。


 「ッ!!!!」


 トーゼツの腹部へと入った彼女の拳。


 重い攻撃をひたすら速度と数で打っていたトーゼツに対し、圧倒的な一撃を込めた調和神アフラの攻撃に対し、それなりのダメージが入ったのか。口から血が飛び出し、大きく怯み、動けなくなる。


 「やはり、どれだけ力を持っていても、物理的肉体に頼っているのには変わりない。のであれば、痛覚もあれば、恐怖もある。どれだけ莫大なエネルギーを持っていても、未だに人の身であるのであれば──)


 調和神アフラは両手にエネルギーを送ると、それをまるで粘土でも捏ねるように形を作り、一本の槍へと変化させる。そのままさらに意識を送り込み、どんどん詳細な姿を創り上げていく。


 これは神話で語られる調和神アフラの神具。


 世界創造時、あらゆる物質を掻き分け、全てに形を与えたという。その後も天と地を支え、世界が終末を迎えるその日まで万物を見守るその槍。


 その名もレヴァレ・ケルム


 本来の出力であれば、触れた物質全てを破壊し、触れた物質全てを再構築する事が可能であり、それは分子を超え、原子、クォーツとこの世界における現代物理学を超えた先までも書き換えが可能という、最高神が扱うに相応しい効果を持った武器である。

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