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内の覚醒 21

 しばらくして、世界に侵食していた黒い闇は次第に収まり、元の世界へと戻っていく。


 「やはり、ファールジュの恐怖が反映されていたみたいですね」


 神を生み出す人の想いが、世界を書き換えるほどの力を持っている事は知っている。というか、調和神として神々の頂点に立っていた自分の力が、まさに世界の再創造というとんでもない権能を保有していたのだ。だから、驚くべきなのは世界を書き換える力ではなく──


 「どれほどの想いの力を溜め込んでいたんだ?」


 アルウェスとの戦いの時、全盛期の十分の一すらも持っていなかった調和神アフラだったが、それでも部屋一つ分ほどの広さであれば、世界の書き換えが可能だった。


 そう、調和神と呼ばれる存在であれば、十分の一の力程度で権能発動が可能ではあるのだ。


 だが、トーゼツはどうだろうか?


 部屋一つ分どころではない。このままファールジュが去らなければ、どんどんあの黒い空間を広げていっただろう。そう考えると、全盛期に匹敵する想いの力を保有しているのではないだろうか。


 「やはり、計画の中心に添えたのは間違いじゃなかたようですね。しかし、方向性のない想いの力を持って暴走するのは想定外でした」


 だが、方向性がなかったからこその利用方法を見出せた。


 それが自分、調和神アフラの再顕現である。


 彼女がこの世界から消滅していたのは、死んだからではない。明確に述べるのであれば、存在維持が不可能になったからだ。神々は想いの力から生まれた。だから魂はなく、肉体も存在しない。ただ、想いの力によって存在を具現化しているだけにすぎない。ゆえに信じられなくなったその時、徐々に権能が使えなくなり、想いの力は枯渇していく。そうなれば神々は自身の存在維持すら難しくなる。そのため、意思すらなくなり、完全消滅する前に神々は物理世界から概念世界へと還っていくのだ。


 調和神アフラもアルウェスに敗北した際に肉体維持すら出来なくなり、意思だけの存在へとなってしまった。本来であれば、他の神々同様、概念世界へと還るべきだった。しかし、調和神アフラの計画がまだ完遂出来ていなかったこと、トーゼツの成長が中途半端であったこと。この二つの事だけが気がかりであった。


 そのため、意思だけの存在となってトーゼツに取り憑いていたのだ。彼の中に渦巻く、想いの力を微量ながら摂取し続けて……。


 そして今、トーゼツの中で溜め込んでいた想いの力が暴発してしまった。本来であれば、想いの力には方向性がある。炎を畏怖する想いから生まれた力には、炎を具現化した神が生まれる。水や大地を畏怖すれば、同じく水や大地の性質を持った神が生まれる。


 しかし、今のトーゼツの想いはあやふやで、方向性が無い。それを利用し、調和神アフラがその一部を取り込むことで自身の肉体再顕現を可能にしたのだ。


 (さて……私が彼の想いの力全てを取り込んでも良いんだけれど…………)


 トーゼツは決してエネルギーを無限大に吐き出す永久機関ではない。これは生まれてから自身の精神の内に溜め込んでいたモノで、それを全て吐き出せればこの事態は収拾する。しかし、そうすれば彼の固有技能にどのような影響をもたらすか、分からない。

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