決着 5
アナーヒターは頭を押さえながら、地面に膝をつき、うずくまる。彼女が展開していた魔法陣もまた、切れかけた蛍光灯のようにビカッ、ビカビカッ！とその光を点滅させながら、ゆっくりと消えていく。
「大丈夫だ、お前は良くやった！」
厄災の攻撃を受け止めながらも、トーゼツは彼女に声をかける。
「もうバフは要らないぜ！そして、お前の出番だ、ミトラ！」
「わ、私！？」
ここでまさか自分の名前が呼ばれるとは思っていなかったミトラは、少し驚きながらも剣を握りしめる。
「わ、私は何をすれば良い！？」
呼ばれたのは良いものの、彼女自身、何をすれば良いのか。まだよく分かっていなかった。
「今、コイツは俺の攻撃を押し切ろうとしている。そのうえ、奴の攻撃は自分の命をも燃やして発動させた一撃だ。つまり！今のコイツは無防備！第三者の奴が攻撃すれば確実に当たり、ダメージも入る！俺は今、受け止めている。アナーヒターは魔力切れ。ようするに、今、コイツにトドメを刺せるのはお前しかいない！！！」
「ッ！！」
そういうことか。
攻撃を押し切られる前に、崩壊中の厄災を殺そうというのか！
「だが、今の私でもいけるのか！？」
無防備とはいえ、刃の厄災だ。戦ってきた数時間で、奴は無防備の状態でも硬く、また体力もある。ミトラの攻撃で倒れてくれるかどうか。
トーゼツはさらに続けて話す。
「奴の肉体は現在進行形で崩壊中だ。だったら、今のお前でも簡単に倒せるはずだ！！」
確かに、その通りだ。
ならば、ここでミトラが動かないわけにはいかない。
「あぁ、分かった！」
彼女は先ほど半分分けてもらった魔力を練り上げ、剣に集中させる。
「なるほどな、私をここで倒そおうというのか。であれば、その前に、何とか押し切ってやる！！」
グンッ！とさらに強い力でトーゼツを押していく厄災。
ガチガチガチ、とぶつかり合っている刃が鳴り、火花が散る。
また、トーゼツも次第にその力に押し負けてきているようだ。どんどん、降り下ろされている刃に負けてその姿勢が低くなっている。
「絶大剣術！！」
だが、彼女の詠唱が始まる。
「最後の全力、出させてもらうよ！！」
「あぁ、思いっきり頼むぜ、剣聖！！諦めず、ここまでやってきたお前の全力を、ぶちかませ！！」
ミトラは、叫ぶ。
「〈一点突破〉！！！！！！！！！！」
その鋭い突きは、トーゼツの横を通り、厄災の攻撃をすり抜け、厄災の胴体ど真ん中へと貫き、入る。
その瞬間、剣先が入り、空いた穴から真っ黒な空気と力が流れ出る。
「そんな、馬鹿なァ！！我が、この我がッ！！こんな所で死ぬなど！！！ッッヌワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ！！！！！！！！！！」
〈サイドラル〉の威力も弱まり、トーゼツが押し返し始める。
そうして、トーゼツの三つの術を重ねた一撃と、ミトラの絶大剣術〈一点突破〉が重いっきり厄災へと向かって襲い掛かっていく。
そうして、数十秒後、厄災の内部にあったどす黒く、狂気にあふれていた気配は抜けきり、そこにあったのは、倒れた一つの黒い影だけであった。
