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内の覚醒 18

 ファールジュは魔法陣にどんどん魔力を送りながら、詠唱を開始する。

 

 「〈ねじれ、渦を巻き、それは貫く。深い淵から白い光を残して、今、穿つ!!〉」


 魔法陣を中心に空間が歪んでいく。その歪みが一体、何なのか。トーゼツには分からなかった。


 (熱で空気が歪んでるように見えているだけか?それとも重力によって光が歪んでいる?それとも、本当に空間そのものが歪んでいるのか?どちらにせよ……迎え撃つだけだ!!)


 金色に光る布を構え、ただ攻撃の時をひたすら待つ。


 そして、ファールジュは叫ぶ。


 「〈スペティウム・トルクエント〉!!」


 詠唱が終えると同時に、その歪みがトーゼツに向けて放たれる。


 それに対し、トーゼツはこれまでと変わらず、金の布を翻し、歪みを弾こうとする。が──


 「……ッ!」


 布を持っている両腕に強い負荷がのしかかってくる。なんて凄まじい威力なのだろうか。腕の筋肉に全力で力を込め、魔力を流して更に肉体強化を行う。が、それでもはじく事が出来ない。


 (本当に空間が……歪んでいるのか!?一体、どういう理屈なんだ?これがファールジュの持つ厄災の権能なのか!?)


 魔術師ではないとは言え、基礎理論は理解出来るし、時と場合、コンディションによっては絶大級の魔術を発動出来るレベルのトーゼツでは理解出来ない術であった。


 「それじゃあ、終わらせるとするわ」


 ファールジュは小さな魔法陣を空中にいくつも展開し、自身を中心に複数の魔力弾を生み出す。


 「それじゃ、さよなあ」


 魔法陣からは魔力光線が飛び出し、一斉に出現していた魔力弾が発射される。歪む空間を相手しているトーゼツはそれを避けることも、受け止めることも出来ない。少しでも布を持つ手を緩めれば、この歪みに体が持っていかれるだろう。しかし、このままでは魔力弾と魔力光線の集中砲火によって殺される。


 思考を巡らせる。が、もう時間はない。


 結局、トーゼツはどうすることも出来ず、全ての攻撃を喰らってしまう。


 「ッ……!あ、ァ…………!」


 纏っている魔力の膜を突き破り、トーゼツの肉体へとどんどん穴を開けていく。次第に布を持つ手に力が入らなくなり、とうとう歪んだ空間がトーゼツに襲いかかる。


 まるで巨大な回転羽に巻き込まれたように、ぐちゃぐちゃと肉は掻き回され、骨や内臓があちこちへ飛び散っていく。さすがのトーゼツでもその痛みに耐え切る事が出来ず、すぐに意識を失い、死んでしまう。


 終わってもなお、空間の歪みはトーゼツの体を壊し、もうどんな治癒魔術でも復活は出来ないだろうと思えてしまうほどまで肉塊にされてしまう。


 「……アナタの固有技能でも、さすがに復活出来ないでしょう。あの人を信用しないわけではありませんが、アナタは弱すぎる。もしもこの状態から復活出来なければ………まぁ、その程度だったというわけね」


 そうして、ファールジュは戦いは終わったモノだとこの場から去ろうとする。

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