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内の覚醒 17

 トーゼツはしばらくして、一つの思考へと至る。


 戦い方自体を変えるか。


 彼は指輪に意識を向ける。すると、空間に穴が開き、そこに使っていた剣を放り込む。と同時に別のなにかを取り出す。


 ファールジュは警戒する。


 武器を変えた?一体、何が出るのか。槍か?弓矢か?銃か?確かトーゼツは双剣を使っていた記録もあった。それに変えたのか?


 しかし、それはファールジュが思っているようなモノではなかった。


 それは一枚の布切れ。


 しかし、ただの布ではない。それは膨大な魔力を放つ、金色の輝きを持った布であった。そこには駱駝らくだのデザインがされており、素人が見ても高価なモノだと分かるだろう。


 ファールジュは予想していたような武器ではなかった。しかし、それが一体、何なのか。ファールジュは一目見て理解する。


 「それも神代の遺物(アーティファクト)か……」


 あれは魔獣や魔物の毛を用いて編まれた特殊な布だろう。だが、そこを理解した所で、その金色の布でどのような攻撃をしてくるのかは未だ予想つかない。


 トーゼツはまるでピザの生地を回すように、器用にくるくると布を回転させる。


 (考えても仕方ない、とりあえず様子見ですわね)


 ファールジュは変わらず魔力弾に魔力光線といった攻撃を開始する。


 先ほどまでは必死に躱していたトーゼツだったが、今回は違う。


 布をまるで闘牛士のようにひらりとたなびかせる。すると、魔力光線に魔力弾、向かってくる攻撃全てを布で受け止め、いとも簡単にはじいてみせる。そのひらひらと動かす動作はまるで踊りのように綺麗で、美しいモノであった。


 「面白いね、だったら──」


 より攻撃速度を早めていく。が、その速度に合わせるようにトーゼツの動きも速くなる。それは決して無駄のない動きなのだが、やはり先ほども述べた通りそれはとても踊りのようでもあった。しかし、古今東西、武と舞は同じモノとしてみられる事が多々あった。きっとどんなモノであってもそれが無駄を削ぎ落とし、油断のないその動きとなれば舞と呼ばれるほどに美しいモノへと昇華されるのだろう。


 「これ以上、攻撃速度を上げるのは無理ね。魔力を放つ単純攻撃程度じゃあ、あの布を破けないということね。だったら、今度は火力を上げるとしよう!!」


 ファールジュは攻撃を続けながら、改めて杖を構え直し、魔力で空中に巨大な魔法陣を描き始める。


 「固有魔術!!」


 彼女の叫びと共に魔法陣へと魔力を送り込む。すると、魔法陣内部に描かれた図形や文字がまるで機械の歯車のように互いに呼応して動き始める。


 固有魔術……それは自身の持つ固有技能を一種の魔術と定義し、魔法陣の式に組み込む。それにより、固有技能本来の力を超えた更なる力を発動させる。それは固有魔術。ファールジュは固有技術を持っていない。が、自分の持つ厄災の権能を固有技術として固有魔術を発動させているのだ。

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