内の覚醒 15
視点は戻り、再びトーゼツの戦いへと戻る。
「ッ、ぁ！！」
トーゼツは強く吹っ飛ばされ、建物の壁に衝突。その後もガラガラと壁が崩れてトーゼツにのしかかる。すぐさま体を押し潰そうとする瓦礫を退かそうとするのだが、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっており、また身体中から感じる痛みによって体が思うように動かない。
それでも根性で立ち上がったトーゼツだったのだが、その瞬間、口から一気に血を吐き出す。
「ちぃッ、うッ！おァ！！！！」
鉄の味が下に広がる。血液の生暖かい感触が喉に残る。とても気持ちの悪く、さらに吐きそうになる。
「アナトの弟なんでしょう？もっと頑張ってくれよ」
そこに一歩、また一歩とゆっくり近づいてくるのは厄災側へと寝返ったファールジュであった。
彼女は杖を構え、その先をトーゼツに向ける。
「まだまだいくぞ」
杖先から一気に魔力が広がり、それはまるでレーザービームのように何十本もの光の線となってトーゼツへと襲いかかる。
「くっ……そが！！」
必死に体を走らせ、魔力光線を避けていく。どれほどの火力なのか。魔力光線が触れる建物の壁や地面は一瞬で溶けて消滅していく。
「ッ！！！」
トーゼツも集中力が切れているのか、避け切れず頬の先を光線が掠り通る。皮膚がジリジリと焦げ、真っ黒に変色する。もしも、これが数センチずれていたら……。
そんなイフを考えて、嫌な汗が流れ出し、呼吸がどんどん荒れていく。メンタル的にも重いモノがのしかかり、よりトーゼツの動きと思考を鈍くさせていく。
その時だった。
「ッ！」
トーゼツの心臓を魔力光線がとうとう貫く。
「ぁ、ああ！」
胸部に開いた穴からどんどん血液が流れ出す。
もう頭が限界だ。思考が定まらない。
「……はぁ、はぁ」
だめだ、意識をはっきり持て。
致命傷だ。しかし、まだどうにかなる程度。ゆっくり、治癒魔術で血管を繋げろ。完全治癒じゃなくて良い。今、ここで戦闘継続出来る程度に治せ。
どんどん出てくる血液量が減ってくる。が、出て行ったモノがすぐに戻ってくるわけではない。体が寒い。血液が足りてないからだろう。より頭が朦朧してくる。赤血球からの酸素供給が間に合っていない。
そして、とうとうトーゼツは死んでしまう。
「……やっと四回目だな」
ファールジュはすぐに杖の構えを解くことはなく、トーゼツを警戒している。
ドクン！とトーゼツの鼓動が復活する。
一気に赤血球が生成され、凄まじい速い速度で細胞分裂を行い、身体中の傷が癒やされていく。体温も戻り、五秒も経たずに──
「ッ、はぁ！！」
息を取り戻し、すぐに起き上がるとファールジュに向かって駆け出す。ファールジュはそれに対し、魔力弾を放って迎え討とうするのだが、トーゼツは止まらない。姿勢を低くして、彼女の攻撃を回避していく。そして、剣を構えて、下から上へと勢いよく斬り上げる。
ガキッ！と刃と杖は激しくぶつかり合う。
