内の覚醒 13
サルワはさらに鎖を追加で放出する。のだが、天玉仙帝はその全ての鎖を流水如払で受け流していく。それだけではない。両足をしっかり地面に着け、龍脈の力も借りている。そうだ、総頂拳の歩法である地同歩だ。この二つを使う事で、無駄な力を使うことなく、サルワの攻撃を対処することが出来る。
「防御じゃなくて、受け流すか!だったら──」
どんどん天玉仙帝の拳によって受け流れていく鎖を巧みに操作し、絶えず攻撃させていた鎖を今度はあらゆる方向に展開し、四方八方、一斉同時に放出する。
百本近い数の鎖が天玉仙帝へと襲い掛かる。
「なるほど、そう来るか」
「その二つの手で何処まで防げるかな!!」
再び仙通絶を使うか?いいや、必要はない。
天玉仙帝はふぅー、と深呼吸し、身体全体に力を纏う。そして、鎖が天玉仙帝の手が届く範囲内にまで到達する。彼は腕の可動範囲の鎖を全て受け流す。指先や腕の力を用い、器用に数十本の鎖を対処する。しかし、脚や背中など、腕の届かない。または対処するのには余裕が無い部位もある。
さすがにこれは攻撃を喰らうしかあるまい、と思ったサルワだったが──
「ふんッ!」
彼は身体全体の関節を同時に捻り、回転する。腰や膝、足の指の関節までも使い、文字通り、身体全体を回転させたのだ。その回転により、身体を纏わせていた力もまた回転の動きによって流れが生まれ、その流れが鎖を受け流していく。
「まじかよ……!?」
これもまた、天玉仙帝の生み出した総頂拳の中にある術。巡転法である。多対一の場合、どうして避けきれない、対処しきれない攻撃が来る。また、戦場であれば真正面の戦いだけではない。不意打ちだってある。その状況から生まれたのが巡転法だ。
地同歩で大地と一体化。龍脈を身体に流し込み、纏った魔力に流れを生み出す。そこから身体そのものを回転させることで更にエネルギーの流れを生み出し、攻撃を受け流す。
だが、そこで終わらないのが総頂拳。この受け流す力を攻撃へと転換する。
エネルギーの流れを利用し、大地を滑るように高速で動き、サルワとの距離を詰める。明らかに地同歩だけでは不可能な動きだ。龍脈の流れと自身のエネルギーの流れ。この二つを掛け合わせることで更に自身の動きを加速させることで高速移動を可能にしたのだ。
「は、速いッ……!」
魔術の展開……ダメだ、間に合わない!
「今度は余の番だ。喰らうが良い!!」
それは神獣ギタブル・へティトを一撃で葬ってしまうほどの技。体を巡る龍脈の力を利用し、放つ龍環掌底を放とうとする。のだが──
「ッ!!」
天玉仙帝の動きがビタリと止まる。
一体、何が起こったのか。それは天玉仙帝自身にも理解出来なかった。
「ようやく効き始めたか!!」
やられると思っていたサルワだったが、立場が一瞬で逆転してしまう。




