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内の覚醒 7

 トーゼツは剣を今度は下から上へと斬り上げる。


 狙う箇所は大きな傷が出来た胴体。凍らせることで応急処置しているが、凍っている部分さえ斬り崩してしまえば今度こそ内臓やら血が出てきて倒れるだろう。


 「喰らいやがれッ!」


 刃に炎が纏う。やはり、冷気を操作する少女に対しては熱系の魔術が効果的だろう。


 少女はすぐさま氷の壁を展開し、防御する。どれほど分厚く、固い氷なのだろうか。ガキッ!と刃が突き刺さり、完全に動きが止まってしまう。


 だが、トーゼツは諦めない。


 まだ、手はある。


 「力を借りるぞ、エルド!!」


 その叫びと共に落ちていたトーゼツの杖が強く輝き始め、反応する。


 「ッ!!」


 トーゼツが何をしようとしているのか、分からない。しかし、状況を転じさせる行動であるのは予想出来る。少女は慌てて杖の方へと意識を向ける。


 空気中の水分を凍らせ、杖を破壊する。


 「さセない!!」


 少女は氷の塊を生み出し、杖へと放つ。


 しかし、術の発動の方が圧倒的に速かった。


 杖の先から光の球が放たれる。それはまさに光の速さで。そのまま氷の塊を破壊し、その先にあった氷の壁へと着弾する。そして、ピキピキピキッ!と氷にヒビが入り始める。


 ふぅー、と息を吐き、剣を持つ両腕に一気に力を入れる。


 「おおおおおおおおおおおおおおっ!」


 がりがりがりがりという音を立てて、どんどん氷が砕けていく。少女はさらに氷の壁に魔力を送り、どんどん防御強化していく。だが、トーゼツの力は増していくばかり。


 光の球でヒビが入ったとはいえ、少女も必死に抵抗しているのだ。破壊するのは簡単なことではないだろう。だが、トーゼツは見事、氷を壊していく。それは魔力量だの、筋肉量だの、火力など言った話ではない。トーゼツの根性が、剣をどんどん前へと突き進ませていく。


 だが、それで良い。


 トーゼツの固有技能である『不屈の魂』は諦めないトーゼツの精神性が生み出した力。この根性、信じる心こそがトーゼツのあらゆる原動力なのだ。


 「なッ、ンだ。この力は──」


 少女は慄く。


 人の恐怖から生まれ落ちた厄災、その力を持っている彼女がトーゼツを恐怖しているのだ。


 (これは魔術、魔力だケの力じゃナい!なんダ、これは──)


 分からない。


 理解出来ない。


 ただひたすら、目の前の事実を受け入れるしかない。


 敗北するのだ、と。


 「これで終わりだァ!!」


 バキンッ!とまるでガラスのような崩壊していく氷の壁。その直後、少女の傷口を塞いでいた氷もまた弾ける。彼女の傷口が開き、一気に内臓や血が飛び出してくる。


 「ッ、あ、ァ」


 か細い声を上げながら、彼女はうずくまる。痛覚がないのか、まったく表情に苦痛の色は見えない。しかし、もう身体を動かすことは無理なようでただ、うまく動かない体にイラつき、喉から込み上がってくる血で言葉を発することが出来ずにひたすら唸っているだけであった。

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