表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
504/606

内の覚醒 4

 少女は短剣を構え、トーゼツの攻撃に備える。


 トーゼツは剣、少女は短剣。動きだけで言うのであれば少女の方に分があると言えるだろう。しかし、リーチ、威力を考えれば有利なのは圧倒的にトーゼツである。


 トーゼツは勢いよく剣を下から上へと斬り上げる。


 少女はその攻撃を避けもせず、真正面から受け止めようとするが予想以上の威力だったのか。その衝撃で体が数十センチも浮き上がり、態勢を崩す。また、完全に受け止め切ることが出来ずに剣先が少女の細い腕を容赦無く斬っていく。


 「ッ、こレは──!」


 さらにトーゼツは詠唱を開始する。


 「上級剣術〈瞬時断絶しゅんじだんぜつ〉!」


 少女に向かって素早い動きで刃が襲いかかる。目では捉えきれない、もしも視えていても対処出来ないほどの速度で斬り刻まんと襲い続ける刃であった。が──


 何か変だ。


 肉を斬っているとは思えない、硬い感触。


 よく見ると、トーゼツの前には透明なナニカがある。


 なんだ、これは……。


 魔術によるバリア?いいや、違うな。もしもそうであれば、バリア発動時に対して詠唱や魔法陣展開といった何かしらのアクションがあったはずだ。無詠唱、無魔法陣レベルの下級魔術でこの攻撃を防げるとも考えきれない。


 であれば、もっと別の……物理的なナニカ。


 (氷の壁!?)


 そうだ、空間と一体化しているように感じるほどに美しく、透明度の高い氷の壁がそこに広がっていた。まるで少女を守るように。


 「離れロォ!」


 少女の叫びと共に、壁がトーゼツに向かって迫ってくる。


 「ッ!!!」


 咄嗟のことで受け身を取ることも出来ず、そのまま壁に押し飛ばされていく。どんどん少女との距離が離れていき、数メートル、数十メートルと攻撃範囲外まで来たというのに、まだ壁はトーゼツを押していく。


 そして、建物の壁にぶつかり、そのまま壁と壁同士で動きが拘束されてしまう。


 「こレでも、喰らってロ!!」


 空中の水分が集まり、巨大な氷の塊となって身動きの取れないトーゼツに向かっていく。その先はまるで槍のように尖っており、正面から当たれば串刺し所では済まないだろう。


 (剣で……くそッ、壁で動けない。ここは魔術で突破するか!)


 運がいいと言うべきか。杖は動く。


 「上級魔術〈陽纏ようてん〉!」


 先ほど用いた〈フランマ・ハビタット〉以上の炎と熱がトーゼツに纏わりつくように発生する。それはまさに太陽にも負けないほどのエネルギーであった。


 それにより、氷の壁はすぐさま溶け、拘束が解かれる。すぐさま剣を持ち直し、迫ってくる氷の塊を対処しようとするのだが──


 「ッァ!!」


 どうやら間に合わなかったようだ。


 氷の塊の先がトーゼツの腹部へと突き刺さる。今度はしっかり、臓器に届いており、トーゼツの口からも勢いよく温かい、大事な赤いモノが吹き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ