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内の覚醒 3

 白い髪をした少女はそのまま壊れた機械人形のような動きでトーゼツに攻撃を始める。


 両手に魔力を込め、その拳で凍った大地を強く叩く。すると、その拳に呼応するように大地が隆起し、巨大な氷の壁となってトーゼツに襲いかかる。


 「中級魔術〈フランマ・ハビタット〉!」


 トーゼツは空中に浮かべておいた杖の力を使い、詠唱した魔術を無魔法陣で展開する。そう、この杖はエルドの遺してくれた、神代の遺物(アーティファクト)に負けない魔具。トーゼツは杖の魔力、性能だけでその魔術を発動すると、すぐに彼の肉体と両手に持つ剣を中心に炎が発生する。


 その炎の熱によってトーゼツの周囲だけが明るくなり、温かい世界へと至る。


 だが、これだけでは隆起した氷から身を守れない。


 そこからさらに、トーゼツは両手に持った剣に力を入れ、叫ぶ。


 「中級剣術〈大切断〉!!」


 力強く、剣を右から左へと強く薙ぎ払う。


 すると、トーゼツに襲いかかっていた隆起した氷の壁が真っ二つに裂かれ、崩れ落ちていく。そうして目の前の視界が開けた瞬間、崩れ落ちる氷の隙間から化け物の触手がトーゼツに向かってくるのに気づく。


 だが、トーゼツもまた追撃が来ることを予測していた。


 剣術を使うまでもなく、魔力を込めた刃だけでその触手たちを斬り捨てていく。


 「雑魚……じゃァ、勝てナい。だったら、私ガ前に出る、しか」


 白い髪の少女は両手に魔力を込めると、そこに白く透き通った氷の短剣が出現する。そして二刀の短剣を構えた状態で氷の大地をまるでスケート選手のように綺麗に滑ってトーゼツへと接近する。


 トーゼツは剣でその短剣の攻撃を防ごうとするが、予想以上の速さで滑る少女の攻撃に対処できず、腹部を切り裂かれてしまう。


 「ッ!」


 しかし、やはりそこは短剣。刃は肉を裂いても臓器にまでは達することはなく、致命傷では決してなかった。それでも痛みはある。血も流れ出す。


 少女は血が付着して濁ってしまった氷の短剣でそのまま追撃を入れようとするが、彼女も氷の上での戦闘は不慣れなのだろう。すぐに止まることが出来ず、そのまま滑り過ぎてしまう。


 これは立て直しのチャンスだ。


 「下級剣術〈ライト・ヒーリング〉」


 この程度の術では止血程度でしか出来ないが、無いよりもマシだ。


 アナーヒターでもいれば、痛覚遮断系の魔術も使ってくれたのかも知れないが──


 「次、機会があれば習得しておくか……」


 無いモノに思いを馳せても意味がない。


 トーゼツは苦痛を耐え抜き、空中に浮かぶ杖に意識を向けながらも剣を構え、敵である少女を睨む。


 「上手ク、クク……体が動かナい」


 やはり、彼女は何処か第三者視点的だ。まるで自分の体を自分のモノと思っていない。この状況でさえ、自分とは何処か関係ないと思っていそうなそれらの言動は──


 「……まぁ、今は考えてもしょうがないか!」


 トーゼツは強く大地を蹴り上げ、今度は自分の番だと言わんばかりに少女へと急接近する。

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