襲撃 5
再び視点は戻り、トーゼツのところへと場面は移る。
既に今日のセレシアでの戦争に関するラジオ放送は終わり、仙国内での報道に変わったため、彼は散歩がてらコーゲンミョウラクを歩いていた。
ここに来てもう一ヶ月。
最初来た時はどこに何があるのか、分からない故に自分で歩いて確認したり、よく街の人に聞いていた。そのおかげで今ではある旅人相手であれば案内できる程度には詳しくなってしまった。
今日もまた、美味しいご飯でも食べにいくか。と思いながら、飲食店が多く並ぶ通りへと向かっていく。
「飯食ったあとは何をしようかな」
ぽつり、とトーゼツが呟く。
コーゲンミョウラクは首都であるという事もあって、冒険者や仙国軍の見回りによる治安維持にかなり力を入れている。それにより、周辺に犯罪者どころか、魔物もいない。
他にも任務依頼がないか、ギルドで確認してもらったが、やはり何もない。治安が良いというのは、決して悪いことではない。なんなら、素晴らしい事だ。しかし、こうもやるべき事が無いとなると面白くない。
「俺も反対押し切って戦争参加すべきだったか……?」
そう思うと同時に、「いや、無理だよな」という思考にいたる。
戦争というのは結局、人と人との殺し合いに過ぎない。文化や種族の違いに、権力の主張、土地や資源の取り合いで行われるそれらは、決してトーゼツの求めるモノとは異なっている。
ギルドの一員だからこそ、トーゼツ自身もメイガス・ユニオンは敵であると認識している。しかし、だからと言って殲滅すべき相手だとは思わない。
戦争は悪と言っても良い。しかし、人類の歴史で一度たりとも無くなったことはない。それに、人類の過去を見れば分かる。戦争はどうすることも出来ない、争う方法が無い場合の最終手段だ。誰であっても戦争をしたくてしているのではない。戦争でしか解決方法を見出せなかったから、戦争をするのだ。
頭の中では分かっている。仕方のないことである、と考えれば良いのだと。しかし、それでもなお、トーゼツの心は──
こんな事、一人で考えてもどうしようもない。戦争というモノに対して、どのように考えても答えなど出ない。別のことを考えて気分を変えよう。
そのように心に出来たこのモヤモヤを晴らそうとするその次の瞬間──
「ッ!?」
トーゼツの視界に強い光が現れ、それから遅れて突風と冷たい風がトーゼツに降りかかる。
光によってクラクラする頭を必死に押さえながら、必死に頭の中で思考を繰り返す。しかし、突然のことで思考は定まらず、体を動かすことも出来ない。
周囲の声も聞こえてくる。トーゼツ同様に、混乱する声に、逃げ惑う足音が響き渡る。
数秒経ち、ようやくトーゼツは状況を確認する。
「一体、何が!」
それは、コーゲンミョウラクの南部の方角。何かが起こったであろう位置はトーゼツの場所から数キロ離れているが、それでも目視出来るぐらいの規模と被害であった。
「ッ、これは……!」
トーゼツの見る先、そこには建物と人ごと凍らせるほどの冷気が広がっていた。




