襲撃 4
アニの目が青白く、美しく輝き出す。
「ほうほう、君の名前はファールジュちゃんね」
どうやら、本当にアニは世界の記憶を読み取っているようだ。
外界の者が規格外の存在であるのは分かっているつもりだったが、まさかそんな事まで出来るとは……。
ファールジュは強く警戒を始める。
今のところ、敵意や殺意というのをアニからは感じられない。しかし、世界の記憶からファールジュに関する知識を知った事でどう動き始めるのか、それは分からない。もしかしたら、急に攻撃をしてくるかもしれない。
それにもしかしたら──
油断せず、ファールジュはいつでも攻撃出来るようにジッと待つ。
しかし、アニはそんなファールジュの事を気にすることなく、この緊張感のある場に似合わない、にやにやと笑った表情のまま頭の中に世界の記憶からの情報を流し続ける。
「えっと〜、年齢は二十六かぁ。魔術学連合の一員でそれなりに優秀な魔術研究者だったんだね。厄災に関する研究をアフラからも任されてて──」
そこで、彼女の表情は止まる。
「…………」
一体、彼女はファールジュの何を知ったのか。驚いた顔で、しかし次の瞬間には新しいおもちゃを見つけたような、そんな満面の笑みが現れる。
「良いねぇ、君も、アフラも!まさか、調和神アフラの計画はここまで想定済みだったってことか!はははははッ!良いよ、本当に良い!」
やはり、か。
しかし、想像はできていたコト。
ファールジュは脚に魔力を込め、ダンッ!と地面を蹴り上げる。そしてアニに急接近し、杖を構え、彼女に向かって強く殴り込む。
アニはその攻撃を避けもせず、防御もしない。別に間に合わないわけではない。本当にファールジュに対する攻撃を真正面から受けるつもりのようだ。
(舐めやがって!!)
この杖には魔力増強と衝撃倍増の術が付与されている。
たとえ、アニが自分よりも圧倒的格上だったとしても──
「無事じゃ済まないよ!!」
そう言って、思いっきり杖を振り上げる。
ボンッ!とアニの体は急激に吹っ飛び、後方にあった建物の壁に背中を強く叩きつけられる。壁はアニとの衝突の際に発生した衝撃に耐えきれずに、粉々に砕けていく。
しかし、それだけ。
アニの体は無傷で、血の一滴も流れ出てこない。
「く、くふふふふ!うははははっ!良い攻撃だったけど、私には届かないよ」
そう言いながら、壁が砕けた際に降りかかった埃などを軽く右手で払う。
「ちっ、さすがは外界の者……。規格外のタフさでね」
ファールジュはさらに魂から魔力を生成し、更なる攻撃準備をしている最中
「いやいや、私は君と戦う気はとっくにないんだから、その杖を下ろしてよ」
そのようにアニは言う。
「確かにあなたとも戦いたいけど、それよりもあなた達の計画の方が面白そうだ。ここはグッと我慢して、見逃してあげるよ」
そうすると徐々にアニの体が透明になっていき、この場から消えていく。
「今回は観客として、見る専に務めるよ」
そう言い残して、完全にアニは消えていくのであった。




