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襲撃

 その後、冒険者ギルド連合本部は少ない被害で国境沿いを突破。大敗したメイガス・ユニオンはしかし、そもそも配置していた部隊の数が少なかったということもあり、メイガス・ユニオンもまた同様に、被害は少なかった。


 また、退却の事を織り込んだ上での戦いだったようで、勝てないと諦めた途端、一時間もしないうちに兵器に物資、人全てを戦地からいなくなっていた。


 今後も戦いが続くと考えれば、もっと被害を出しておくべきなのが──それでも初戦が冒険者ギルド連合の勝利で終わったことは変わらない。


 そのままセレシアへと侵攻し続け、どんどんメイガス・ユニオン本部へとギルド連合本部は進んでいく。


 それから数週間、やはりセレシア侵攻をそう簡単に許すわけがなく、何度も冒険者ギルド連合はメイガス・ユニオンと衝突する。のだが、やはり彼らは侵攻を止めることが出来ず、戦っては負けて退却という戦いが続いた。



 『本日、セレシア国内で発生している戦争で──』


 そこは仙国の首都、コーゲンミョウラクの冒険者ギルド。最初こそ多くの冒険者たちが戦争の状況を気にして聞いていたが、やはり圧勝が続くことで皆、ラジオの戦況報告に耳を傾ける者は少なくなっていた。もう負けることはないだろうと安堵する者、戦況がずっと同じ勝利で聞くのに飽きた者……聞かなくなった理由は様々だ。


 しかし、一部の冒険者は毎日、ギルドへ訪れてはラジオを聞いていた。その中にはもちろん、トーゼツの姿もあった。


 「上手く侵攻出来てて、逆に怖いな」


 そのように呟きながら、湯呑みに入った茶を飲むトーゼツ。


 ヒットアンドアウェイでギルドの戦力を削りつつ、メイガス・ユニオン本部へと誘っているように感じる。それに、まだダイモンが出てきたような情報もない。つまり、相手は決して本気を出していないということでもある。


 まだ、どうなるか分からない。


 そのように不安を感じているトーゼツに対し、


 「そうだねぇ。まぁ、組織の規模を考えても、戦力差的にもメイガス・ユニオンが勝つ事はあんまり考えられないけどね」


 そのようにトーゼツの呟きに軽く反応するのは彼の見張り役のテルノドであった。


 彼はテーブルの上に本と紙を広げている。そして慣れた手つきで左手で本を開き、右手で紙にひたすら書いていた。何を書いているのか、その詳細はトーゼツには分からなかった。しかし、魔術による魔力エネルギーの変換効率の公式であったり、詠唱式、または魔法陣などが描かれていることから、魔術に関する何かを書いていることだけは分かる。


 また、広げている本も表紙を見れば、小説や物語と言った娯楽的なモノではなく、研究者しか読まないような学術雑誌であるのが分かる。


 「アンタも大変そうだな」


 「まぁ、君たち冒険者と違って俺は研究者だからね。戦争参加しないからと言って休みがあるわけじゃないのよ」


 そう言ってガリガリと必死に計算して、公式を用いて書いていくテルノドであった。

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