戦争開始 15
弓聖の職を持つのに相応しい実力でミトラを支援するウェルベス・コットロル。老体で引退を考えても良いほどの年齢だというのに、それを感じさせないほどの技術に魔力量であった。
彼のおかげでミトラは無事に魔術の猛攻を潜り抜け、第二の塹壕へと到達する。が、彼女は塹壕の魔術師たちを無視して後方にいた儀式魔術を発動させようとしていた部隊の前へと向かう。
「待て、行かせな──」
魔術師たちが通り過ぎたミトラに魔術を撃とうと意識を向けるのだが……。
「おいおい、アイツだけに集中してんじゃねェよ」
そこに聞こえてくる一人の声。
それはベスであった。
ミトラに多くの魔術師が集中してしまっている間に第二の塹壕へと到達していた。
「なッ、コイツ……!上級魔──」
魔法陣を展開し、詠唱を開始しようとする。先ほどから魔術攻撃をしていたからこそ分かる。下級、中級程度ではコイツを倒すことは出来ない。最低限、上級魔術でなければ。
しかし、もう間に合わない。時間はない。
ベスは問答無用でズバズバズバッ!と魔術師たちの首が撥ねていく。
(先生のおかげで後方気にせず行ける!!)
ミトラはより速度を上げ、どんどん前へ、前へと進んでいく。だが、ミトラの侵攻をむざむざと許すわけではない。彼女を止めようとする魔術師たちがどんどん群がっていく。
「上級魔術〈ボルカニック・エラプション〉!」
詠唱と共に紅く、凄まじい熱気の炎が噴き上がる。
「上級魔術〈ブレイジング・エアー〉!」
激しい風と共に斬撃にような鋭い衝撃波が飛んでくる。
「絶大魔術〈ウルトラネオン〉!」
一つの巨大な魔法陣からバチバチィ!と電気のようなモノが現れたかと思えば、次の瞬間には赤く、美しい魔力の光線が放たれる。
それだけではない。先ほどとは比べられないほどの物凄い火力の攻撃はミトラに襲い掛かる。
これまでの彼女であれば、これらの攻撃を防ぐことすら出来なかったかもしれない。
しかし……。
「私だって成長してるんだから!!!」
ミトラもまた剣により魔力を送り、腕に力を入れる。彼女もまた、剣術発動させるために剣身を中心に魔法陣を展開する。しかし、それは一つだけではなく三つ。それは複数同時の剣術発動。もちろん、その程度のことはこれまでもしてきた。下級剣術と上級剣術をかけ合わせたり、下級の治癒魔術で肉体を治しながら剣術で攻撃したりと、様々な環境、状況でやってきた。
それでも、頑張って三つかけ合わせるのが限界だった。それに、出来て上級同士のかけ合わせが限界であったが、今回は──
(下級の拡散系統の魔術を発動、そして……!)
ミトラは詠唱を開始する。
「絶大剣術〈ケレリタス〉!!」
剣が太陽にも負けないほどの光で輝き始める。いつもであれば、このまま剣を振るって攻撃している所だが、彼女はそれを維持し、さらに叫ぶ。
「絶大剣術〈螺旋炎突〉!」
さらに炎が剣の周囲に発生し、ぐるぐると螺旋を作り始める。




