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戦争開始 13

 一体、誰だ?男がそう思った時には守ってくれた魔術師は先へ先へと走っていた。しかし、水のバリアというだけでそれが誰だったのか、予想はつく。


 そう、きっと助けてくれたのは水神と呼ばれる最強の魔術師こと、アナーヒターである。彼女はそうして多くの仲間を助けながら、振り返ることなく後方部隊の魔術師を引き連れてどんどん進んでいた。


 「どんどん前線は進んでいるんだ、私たちも早く追いついて支援するぞ!!」


 その言葉で後方部隊の戦士たちは鼓舞されていく。


 「くそッ、はやくあの侵攻を止めるんだ!儀式魔術を用いるぞ!!」


 その指揮官の言葉によって一人の部隊が魔力で地面に巨大な魔法陣を描き始める。


 儀式魔術は複数の魔術師が魔力、知識を合わせることで発動させる魔術だ。それは魔術師の質や魔力量によって効果、威力はもちろん変わる。呼吸を合わせることも大事だ。大抵の場合は想定内の力で、しかし予想以上に弱かったりする。


 しかし、メイガス・ユニオンの魔術師だ。きっと予想以上の効果を生み出すに違いない。


 「ちぃッ、アイツら、何の魔術を──」


 前線で戦っていたベスは動かしていた手足を止める。


 あれが儀式魔術であるのは分かる。危険であることも承知だ。しかし、専門的な魔術の知識がない彼には発動させようとしているその魔術が何なのか、それを見破る方法はなかった。


 そこに、持っていた連絡系統の魔術が付与された木札が震え出す。


 『ベス、気をつけろ。あの魔法陣は動力(どうりょく)系統の魔術だ。』


 その声はアナーヒターのモノであった。


 「動力?」


 それは基本の魔術の一つだ。


 物体を動かすことを目的とした魔術。単純に筋力に魔力を上乗せしたり、手に触れずに何か物を動かしたりと魔術の中では基本中の基本の魔術。


 しかし、メイガス・ユニオンの考えることだ。動かす物体も規格外のモノだと考えて良いだろう。


 では、一体何なのか?


 魔法陣は空中ではなく地面に描かれている。ということは動かす目標は地面にある。


 …………いいや、違う。


 目標が地面にあるのではない。


 目標が地面なのではないか?


 つまり──


 「地震を起こすつもりか!?」


 地震の仕組みを一々説明しなくても分かるかもしれないが、地層の下にあるプレートは動き、ズレることで発生する現象だ。実際にプレートを動かすわけではないにしろ、星の表面上にある地層を動かすだけでも、混乱を起こし、我々の動きを止めるのには十分な地震を起こす事は出来るだろう。


 ベスはより脚に力を入れて、早く走り出す。


 あの魔術を止めなければ……!


 「撃て、近寄らせるな!!」


 一人の言葉に合わせて、多くの魔術がベスに襲いかかる。しかし、ベスはそれらを見切り、避けていくが全ての攻撃を回避することはできなかった。

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