戦争開始 12
次々と冒険者たちは攻撃を潜り抜け、次々に塹壕戦を攻略していく。
「くそッ、やはり魔術による攻撃ではダメだ!進撃を止めるには兵器による殲滅を……!はやくアイツらのバリアを破壊するのだ!」
砲撃部隊を任されている隊長に急かされながらも魔術師たちはカノン砲へと魔力を送り込み、より早く、より強力な魔力弾を撃ち始める。
しかし──
「させねぇよ!!」
そこに空中から何かが降り立ち、一気に魔術師の首を撥ねていく何者かの姿が。
抵抗する暇すらない。
「なッ──」
ここは最前線から最も遠い後方だ。塹壕も第二、第三と掘っている。というのに、もうここまで到達する冒険者がいるのか!?
ありえない。
しかし、目の前の事実がそれを否定する。
隊長は杖を構え、攻撃しようとするがそれも間に合わず、すぐさま視界が暗くなっていく。
「さすがにこれ以上、砲撃されちゃあまずいからね」
それは槍を振り、刃に付着した血を払う。
そこに立っていたのはアナトであった。
(さて、このカノン砲、どうするか……)
今後のことを考えればコイツはここで破壊しておくのが常套だろう。もしもこのまま放置して次のカノン砲部隊を叩きに行けば、その間に回収される可能性があるからだ。そうすれば、今後の戦いでもこのカノン砲が利用され続け、最終的にどのように戦況に響くか、分からない。
しかし、同時にこれはメイガス・ユニオンの研究中の兵器だ。壊さず、綺麗な状態でいくつかこちらで回収しておきたいというのもある。
「……くそっ!」
どちらが正しいか、そんなの今のところ分からない。であれば、破壊しておくことを優先することにしたアナトは容赦無くカノン砲に向けて槍を構えて破壊する。
そして、脚に魔力を込めるとそのまま強く地面を蹴り飛ばし、次のカノン砲部隊に向けて駆け始める。
次第に放たれる砲弾の数は減っていき、敵の魔術攻撃も少なくなっていく。
「退け!!ここは捨てて退くんだ!!」
その言葉に合わせて多くの魔術師が第一防衛戦だった塹壕から飛び出し、第二、第三の防衛戦用に掘っていた塹壕へと入っていき、どんどん後方へ下がっていく。それに対し、さらに追いかける形で冒険者たちは進んでいく。
「進み続けろ!!このまま追い詰めていけ!!」
魔術師たちはボロボロであるのに対し、冒険者側はまさに快進撃であった。
しかし、だからと言って全員が無傷というわけではない。
「ッ!」
大地を走っていた一人の冒険者が転ぶ。
多くの行き交う魔術攻撃によって地面は凸凹だらけ。転んでしまうのも無理はないだろう。しかし、ここは戦場。それすらも命取りだ。
立ちあがろうとしたその時──
「なッ!!」
目の前に巨大な炎が向かってきていた。
はやく避けなければ……しかし、立ち上がるよりも早くその炎は冒険者へと到達してしまう。
死を覚悟する。だが──
「大丈夫か!!」
その言葉と共に気づけば男の前には水のバリアが広がっていた。




