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戦争開始 2

 そのテントの周辺はドワーフよりも、人族の冒険者が多いということもあって、たくさんの灯りが設置されていた。その光はまさに首都ヴェリルの中心地よりも明るく輝いている。


 そのテントの群集地を歩いているのは、一人のドワーフ。


 周囲の人に比べて、やはりドワーフらしく背の低いため、存在感が薄いように見える。しかし、その風格、腰に携える青い光が灯った不思議な魔剣……これらの姿から素人の目でも彼が只者ではないことだけは分かる。


 そして、そのドワーフはまっすぐと歩いていき、とある一つのテントの前へと到着する。本来であれば、ノックするのがマナーだろうが、テントにドアなどがあるはずもない。ドワーフの男はその代わりに礼儀正しく「今、よろしいか?」と尋ねる。


 その言葉に「大丈夫、入って良いぞ!」と返答が来る。


 許可をもらった所で遠慮なく入って行くドワーフ。そのテントの中に居たのは冒険者のメイン戦力。


 剣聖ミトラに、その先生にあたるベス。術聖アナーヒターに、彼女同様、術聖であり医神とも呼ばれるエイル。このメンバーの中で年長者であり、弓聖のウェルベル・コットロル。そして──


 「貴殿がアナト・サンキライか?」


 「ええ、アナタがこの国の英雄の剣聖、エイヴィル・レギンね」


 「貴殿に比べれば、私は英雄とは程遠い存在だ。幾度かセレシアの侵攻を食い止め、追い返してだけに過ぎん。そもそも、俺がいなくても我が国の英傑たちが力を合わせればエルフ共を倒すことなど苦労せんわ」


 確かに、アナトと比べれば彼なんてさほど強くは無い。だが、それは誰だってそうだ。規格外のアナトと比べられてしまったらどんな相手も弱者へと立場が落ちてしまう。


 相性やその日の調子などを含めれば分からないが、レギンはそこにいる剣聖ミトラ程度であれば倒せてしまうほどの実力を持っているほど上澄の戦士であった。


 「しかし、噂でしか知らなかったが、一目見るだけで分かるほどの圧倒的実力者だと分かる。これはまさに噂以上の存在だな」


 「褒めても何も出ないよ。それに世辞の言い合いも互いに求めて無いでしょ?」


 「その通りだ。貴殿はセレシアとの国境線の下見をしたいんだろう?俺はその案内役として王から遣わされた者だ。もうしばらく時間がかかりそうだな」


 そう言って周囲を見渡す。


 このテントの中に冒険者のメイン戦力が揃っているということは、何か話し合っていたということだ。このテントの中央にあるテーブルに広がれた地図にはスヴァルトにセレシアを含めた周辺国の地理が詳細に描かれていた。そのうえには駒がいくつも置かれており、どうやらメイガス・ユニオンまでの侵攻計画や冒険者の配置を考えていたことが伺える。


 「俺がいたら邪魔だろう、テントの外で待っている。終わったら声をかけてくれ」


 そう言ってレギンは外へと出て行く。

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