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戦争準備 10

 そして、一週間後……。


 それはテンギョクがアナトに指定した、返答する日であった。


 昼頃に再び霊霄殿れいびょうでん赴き、テンギョクと面会する予定になっているアナトは、宿泊している宿屋の一階にある食事処でトーゼツと一緒に朝食を取っていた。


 「姉弟きょうだい揃って食事というのも久しぶりよね」


 そう言いながら口へと運ぶのは、トーゼツ達が旅の道中でも食べていた包子パオズであった。しかし、今回食べているのは先ほど出来た正真正銘、出来立てであった。また、中身は肉よりも野菜多めで、まさに朝食べるには適した消化に良く、健康を考えられたモノになっていた。他にも茶碗蒸しやスープと言ったモノがテーブルの上に並んでいる。


 まさに、健康的で理想な朝食だ。


 「そうだな、姉貴は任務で、俺はずっと旅に出て一緒にご飯食べるタイミングなんて無かったもんな」


 その言葉に、少しピキッ!と頭に来るアナト。


 「いいや、違うね。私は家族の時間を優先するタイプの人間だし。アンタが帰ってこないのが悪い」


 「この前、神都に帰ってたじゃん」


 「アンタは失踪していたアナーヒターの連行について来ただけでしょ?それをあたかも自分の意思で帰って来たと言うのはどうかと思うが?」


 「でも──」


 と来た所でとうとうアナトが我慢の限界に来る。


 「そもそも!帰った時も家に帰らず、ずっとギルド連合本部で寝泊まりしていたって聞いたんだけど!!なにアンタ、姉である私の事がキライってことなかしら!!」


 声を荒げて、テーブルをドンドンと台パンしながら叫ぶ。


 それに対し、トーゼツも負けじと叫ぶ。


 「だったら言いたかった事、言わせて貰うけど!!姉貴は俺の事を冒険者としてではなく、保護対象として見てるだろ!どうして俺を冒険者として認めてくれないんだよ!!」


 「そりゃあアンタが私よりも弱いからに決まってるでしょ!?」


 「その理論で行けばお前以外の冒険者は、冒険者として相応しくないということになるんだが!!」


 お互い、腹の虫を抑えるように次々に包子を頬張り、腹に入れながら叫び続ける。しかし、それも長くは続かない。精神的にも、体力的にも疲れてきた二人は深呼吸し、食べかけの包子を皿に置く。


 アナトの言う通りトーゼツは実家に帰ることなく、ずっと別の場所で寝泊まりしていた。しかし、それは決してアナトが嫌いだから、という理由では無い。もちろん話していた通り、冒険者として認めてくれないという点は嫌いというか、苦手な部分ではある。


 とはいえ、既にトーゼツとアナトの両親は他界している。逆にトーゼツは最後に残った家族として姉であるアナトの事を尊敬しているし、好きである。


 では、どうしてアナトの事を避けているのか。


 それは劣等感である。


 アナトの言う通り、自分は弱い。そんな事は分かっている。


 だからこそ、姉であり、常に最強として戦い続けているアナトに対し、嫉妬や劣等感を抱えているのだ。それが自分の醜い所である事も理解している。だからと言って、簡単にそれを治す事が出来るほど完璧な人間ではないのだ。

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