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対等

  気づけば、そこは故郷の風景が広がっていた。


 レンガ造りの建物が並び、道も舗装されている立派な場所。また、今は明るいため、灯っていないが、街燈も等間隔で設置されている。この世界の常識で考えれば、これほどの都市はかなり大きく、まさに世界都市に数えられてもおかしくはない規模の街並みであった。


 だが、彼からすれば子供のころ見慣れた光景。


 「……懐かしいな」


 彼は歩き始める。一体、自分が何者で、なぜここにいるのか。記憶は曖昧。状況は不確か。そんなぼやけていながらも、記憶の中で鮮明に残っている世界の中を進み続ける。


 すれ違う人々は、その街に会った者たちであった。


 近所のおばさん、おじさん。肉屋の店長に、果物屋の店員。いつもの冒険の話を聞かせてくれた冒険者。これまた彼にとって懐かしい顔ぶりが続く。


 そうやって進んだ先には、大きな広場があった。


 中心には噴水があり、誰でも休めるようにベンチが設置してある。


 そんな広場にいたのは。


 「俺と……」


 幼いころに自分であった。


 だが、それだけではない。


 幼いころ、自分を指さし、笑ってきた近所の子供たちだった。


 旅する勇者に、人々を救う英雄。悪竜を討伐する戦士に、どんな過酷な状況でも諦めない冒険者。


 そんな物語に憧れ、夢を抱き続けた自分は、周囲に笑われていた。


 実力はない。


 経験もない。


 才能ですらも……。


 魔物の餌になって終わりだと皆が叫ぶ。


 同い年の者は馬鹿にし、大人は無茶なことだと言いなだめる。


 俺は、誰からも愛されてこなかった。


 家族は俺に優しかった。だが、それは何の才能も持たない自分への慈悲であった。


 慈しみ悲しむ。決して慈しみ愛する慈愛の気持ちではなかった。


 だから、俺は諦めなかった。


 皆は笑い、悲しみ、蔑んでいた。そんな奴らの言葉に耳を傾ける必要はない。才能がないのであれば、努力で勝ち取るだけだ。諦めず、目の前の障害を踏み抜く。


 それだけだ!!!!


 「そうだ、俺は―!」


 彼は、その瞬間、一気に思い出す。


 自分は何者で、何をしなくちゃいけないのか。


 彼の名前はトーゼツ・サンキライ。


 必ず諦めず、障害を踏み抜き、進む者。


 「これは夢か。くそっ、奴の攻撃を正面から喰らって、寝ちまっているのか」


 なんてだらしないのか。


 あの程度の、死ぬかもしれないだけの攻撃で意識を失うなんて。


 諦めない限り、俺は死なない。死んでられない!


 「こんな所で、諦められるか!!」


 ドクン。


 死んだはずの肉体が、再度、鼓動を始める。


 ドクン……ドクン…ドクン、ドクン!ドクン!ドクン!!ドクン!!!


 どんどんその鼓動は高まり、脳の動きも再開する。

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