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ダイモン 50

 ギタブル・へティトはすかさず左鋏ひだりはさみを振り上げ、テンギョクに向けて振り下ろす。だが、それもまた簡単に受け流されてしまい、右鋏みぎはさみ同様に破壊されてしまう。


 「はははっ、良い攻撃だった!だが、龍脈の力を体内へと循環させ、放つこの技こそ、余の拳技けんぎが誇る一手の一つ。龍環掌底りゅうかんしょうていよ!!」


 自慢のはさみもなければ、もう尾もない。ギタブル・へティトが使える有効な攻撃手段はない。だが、それでも諦めない。


 最後まで、神獣と呼ばれた誇りを持ってギタブル・へティトは最後まで足掻く。


 その巨体に魔力を纏わせ、テンギョクに向かって思いっきりタックルをする。


 「最後まで諦めない。良い矜持だ!であれば余の放てる最高の一手で沈めるとしよう!!」


 コォォッ!と深く息を吸い、広げたてのひらに力を込める。そして──


 「覇天神掌はてんしんしょう!!!」


 叫びと共に放たれた右掌からは凄まじい光と力が渦巻き、ギタブル・へティトの体をまさに肉片一つどころか、血液の一滴すらも残さず吹き飛ばす。そして、そこに残ったのはただ一人……。


 「ぬははははッ、神獣と言えどもこの程度!!全力を出すほどの相手でもない!だが、久方ぶりの戦いで、これほど楽しんだのは数百年ぶりのこと!あの世で誇るが良い!」


 テンギョクだけが楽しそうに高笑いしているのであった。



 場面は変わり、そこはギタブル・へティトとテンギョクが戦っていた所からは少し離れた場所。


 「……あっちの戦いは終わったようだけど──」


 それは空気中の水分を集め、体を守るように水を纏わせながら杖を構えるアナーヒターの言葉であった。そして杖の先にいたのは……。


 「アンタも、ここで終りかな?」


 傷だらけのローリィがいた。座り込み、落ち着いて呼吸を整えようとしているが、全く酸素供給が追い付いていないのだろう。何度も、何度も深く、荒い呼吸を繰り返す。


 また、戦闘時に纏っていた炎も弱まっているようで、アナーヒターとの戦いでかなり精神的にも、肉体的にも消耗してしまったと思える。


 「……いいや、まだまださ」


 彼女は立ち上がり、纏っている炎を右手に持っている剣に集める。


 「おいおい、それ以上抵抗するのは止めて欲しいな。手加減が出来なくなるから」


 アナーヒターは地面中の水分を吸い上げ、さらに操作する水の量を上げる。


 (私の魔力はそろそろ切れそうだってのいうのに……さすがは──)


 私は今でこそ、メイガス・ユニオンの中でもトップクラス。最強とも呼ばれているがそれはアナーヒターがメイガス・ユニオンを去ったからだ。彼女がメイガス・ユニオンに在籍していた時代が最もセレシアの輝かしかったと言われるほど、アナーヒターの存在は大きかった。


 私では決して届きえないほどの高みにアナタはいるのでしょう。でも──


 「私だって、成長しているんですから……!!」


 ローリィの力と炎がどんどん上がっていく。


 「これは……この力は、まさか──」


 その直後、太陽にも負けない熱と光がアナーヒターを呑み込む。

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