ダイモン 49
再びテンギョクは戦闘の構えを取る。
神獣ギタブル・ヘティトは不死身の化け物だ。きっと何度殺しても復活してくるだろう。
だが、それにも限界があるはずだ。
先ほどの復活していく様子から、脱皮することで傷ついたこれまでの自分を捨て、新たな肉体へと生まれ変わっている。先ほどのように肉塊にしても復活するだろう。だが──
「肉片一つも残さずに殺せば確定だな」
正直、それはやりすぎのような気もする。再生出来ないほど細切れにしてしまえば、良いような気もする。だが、格下とはいえ復活してくる敵に何度も戦うのは面倒だ。ここは確実性を持ってやった方が良い。もう一発で仕留めてしまった方が楽だ。
「しかし、それはさすがに骨の折れる作業だな」
テンギョクは構え方を変える。
作っていた拳を解き、掌底打ちの形へと成る。
「余が生み出した総頂拳を喰らうが良い」
両手には魔力ではない、人を超えた力……まさに神の力が宿る。
自分では対処出来ない攻撃が来る!そのように察知したギタブル・ヘティトは尾に魔力を纏わせ、先制攻撃を行う。尾の先にある毒針は神をも殺す猛毒だ。テンギョクであっても無傷では済まないかもしれない。しかし──
「破重掌!!」
重く、しかし強く放たれたその掌底は今まで放ってきた拳同様に空間を伝わり、衝撃となってギタブル・ヘティトに襲い掛かる。
尾はいとも簡単に破壊され、跡形もなく散り、そして体を覆う全ての甲殻にヒビを入れる。
しかし、ギタブル・ヘティトは怯まない。
テンギョクとは埋まらないほどの実力差があるのはもう既に理解している。だからこそ、驚きはなく、痛みに苦しむことはない。実力差があれど、それが勝てない道理にはならない。
今度は鋏に魔力を送り、その鋭い刃でテンギョクを斬り刻もうとする。
「ほう?しっかり反撃をしてくるとは……腹をくくってきたか!」
さすがにこれを真正面から受け止めることは出来るかもしれない。だが、それでも無傷では済まない。そのように判断したテンギョクはその刃を素早く躱わす。だが、その躱わす動きも、独特な動きで足に地面をつけたまま、まるで氷の上を滑るかのような躱し方であった。
ギタブル・へティトは止まる事なく、そのまま両鋏で何度も追撃を行うが、それを同じような動きで見事、躱していく。
「ふはははっ!余の拳は攻撃だけではない!大地と一体になり、龍脈を利用することで可能にする歩法。地同歩!そしてこれは避けるためだけの技術ではない!!」
大きく刃を開けて襲ってくるその右鋏をなんと、いとも簡単に受け流しながら反撃として掌打ちを入れ込む。ヒビに入っていた甲殻は完全に砕け、またこれまでの空間を通して与えられる衝撃波攻撃とは違い、直接肉体に触れられてしまったことで一瞬で右鋏が跡形もなく崩壊する。




