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ダイモン 47

 動こうとするギタブル・へティトに向かって何度も、何度も……何十回も天から光が落ちる。ダメージは入っている。が、動きを一時的に止める事しか出来ず、致命的な傷は与えきれてないようだ。


 「ふむ、これほどの火力でも死なんとはなぁ……」


 そのように呟くのは、空高くにふわふわと浮いている一人の老人であった。


 「ほれ、もう一発!!」


 指先に魔力を纏い、それを地上にいるギタブル・へティトに向けて放つ。


 バチバチィ!という音と共に落ちるその光は、やはりそれなりの威力はあるものの、ギタブル・へティトを倒すまでにはいかなかった。


 「やはり神獣、儂程度の力じゃあ勝てんか。それに元々、電撃は儂の力じゃないしのう。まぁ、時間稼ぎにはなったかの?」


 そうして老人の見る先は死にかけのアイギパーンを連れて急いで逃げているシリウスとミトラの二人であった。


 ようやく安全地帯と思えるほど距離の取れた二人は一度、足を止めて呼吸を整えながらギタブル・へティトの方を確認する。


 無事……ではないのだろうが、まだまだ動けるそのさそりの姿を見て二人は恐怖のようなモノを感じていた。


 「あの巨大(さそり)が何なのかは知らないけど、やっぱ化け物だな!四方星でも殺しきれないって、厄災級でしょ!?」


 そんな感想を抱くミトラだったが、これは厄災よりも厄介かもしれない。


 厄災は悪神からこぼれ落ちた存在だ。神の権能が使えるモノの、神そのものではない。しかし、ギタブル・へティトは罪を背負った神を殺す存在。まさに神殺しの獣。明らかに存在は厄災を超えている。


 もちろん、今、目の前にいるギタブル・へティトは本当に神代の時代を生きたギタブル・へティトではない。ハニエルの影によって再現された使い魔だ。本物よりも力は低いのだろう。それでも、これほどの力を持つのだ。とんでもない相手である。


 その巨体をズズズ、と動かし、今にも両手のはさみで暴れようとする。そこに、追撃にいかづちを落とし、追撃をして動きを邪魔するのは空中にいるあの老人だった。


 「やっぱり四方星を呼んで正解だったわ」

 

 四方星。


 それは仙帝に認められ力を与えられた、仙帝直属の兵士。その数は四人おり、全員が現代魔術学では説明できない、神の権能に近いほどの超異常能力を保有しているという。


 この国に入って出会ったあのワンウーも四方星の一人である。


 そして今、いかづちを落としている老人もまた、四方星の一人。


 バイフーである。


 「うーむ、威力をいくら上げても勝てんとは……情けないことこの上なし。彼のお方の前で活躍したかったが、仕方ないことじゃ。このまま下がったあのお方に任せるとするかのう」


 そうしてバイフーは下がる。


 それと同時に地上から歩いてギタブル・へティトに近づく一つの影。


 「後付けの力とはいえ、あのバイフーの電撃でも死なないとはな。余でなければこの場は抑えきれんか」


 そこにはこの国の王であり、仙人を束ねる皇帝。


 天玉仙帝であった。

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