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ダイモン 45

 シリウスは苦痛で動けなくなり、その場に倒れそうになる。


 「はぁ……はぁ……!」


 痛い。


 苦しい。


 涙が出そうになる。が、涙もすぐに熱で蒸発していく。


 だが、倒れるわけにはいかない。


 せめて師匠であるアイギパーンを助けるまでは──


 

 エルフ社会……特に北の大国もとい、エルフ単族国家であるセレシアではエルフ至上主義であると同時に魔術の才能によって地位が決まる社会でもあった。


 そして、彼女には魔術の才どころか、魔力すらも上手く生成出来ない。人間よりも少ない魔力量であった。だからこそシリウスは捨てられたのだ。


 でも、アイギパーンは違った。


 エルフではなく、ただの人間種である彼にとっては魔術の才など関係がないのかもしれない。それでも、彼は私を捨てることなく、育ててくれた。生き方を教えてくれた。それが戦うための射撃術でも、人を殺すための暗殺術であっても、シリウスがこの世界で生き残るために必要なものだった。


 そんな自分を拾ってくれたアイギパーンを見捨てる事が出来るだろうか。


 否。


 だからこそ、この炎の世界で彼女は進み続ける。


 アイギパーンを必ず守るために。



 「見つけ、た!!」


 炎が舞い上がる中、瓦礫に埋もれたアイギパーンを見つける。


 それは服も、髪も燃え尽き、皮膚が真っ黒に焦げている。もう人であるとしか認識できない。しかし、シリウスは革新していた。これは自分の恩人である彼の姿である、と。


 ひゅー、ひゅー、と呼吸をしており、まだこの状態でも生きているようだ。


 (これじゃあ……長くは、持たない…。早く回復術師に──)


 いいや、そんな都合よく回復術師が近くにいるとは思えない。居たとしても、これほどの怪我を治療出来るほどの実力者とは考えきれない。


 そこでシリウスはハッとする。


 一つだけ、助けてもらえる手段があると。


 だが、その手段もとりあえずここから逃げ出さなければ意味がない。瓦礫をなんとか押し上げ、ここから引っ張り出そうとするその時──


 「……化け物、め!!」


 後方からズズズ、と動き出す巨大な影。


 それは爆発に巻き込まれ、死んでいたはずのギタブル・へティトであった。


 熱で甲殻が赤くなっており、あちこりからジュウッ!という肉が焼ける音が響き、それと共に蒸気が立ち込めている。奴も無傷ではない。この炎の世界で苦しいのはお互い様だ。しかし、シリウスに比べ、ギタブル・へティトの方がかなり余裕があるようだ。


 巨大なはさみを持ち上げ、攻撃しようとする。こんな状況でもアイギパーンを殺そうとしてくる。


 「私は、諦めない!」


 拳銃を構えて、反撃の準備をするが抵抗することも出来ずにやられるだろう。


 必ず生きてここを生き延びてみせる。


 必ずアイギパーンを助け出すために。

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