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ダイモン 43

 ズンズンと巨人でも歩いているかのような地響きが近づいてくる。


 吹っ飛ばしたアイギパーンにトドメを刺すためにギタブル・へティトが向かってきているのだろう。


 血は止まらず、激痛が続く。まだアイギパーンの体は落ち着かない。だが、このままやられる気はない。ライフルを構え、迎え打つ準備をしようとするのだが──


 「運も尽きた、か」


 先ほど吹っ飛ばされた時だろうか。ライフルのバレル部分が折れ曲がっている。また、レバーを回し、排莢してみようとしてみるが、反応しない。


 明らかに壊れている。応急処置も出来ないほどの破損だ。


 こんなモノを……もう使えない、ただの重い鉄の塊を大事に抱えておく必要はない。その場で怒りと共にライフルを投げ捨てる。


 大丈夫、まだ武器はある。ライフルとは違い、寝る時にも常備している懐の拳銃を取り出す。


 だが、武器があるからどうだと言うのだろうか。


 まだ炸裂弾はある。しかし、拳銃とライフルでは射程距離も、威力も圧倒的に下がる。全力で魔力を込めても、きっと拳銃がその魔力に耐えきれない。


 どうするか……。


 そこで周囲を見渡し、ようやくここが何処なのか、気づく。


 どうやらここは倉庫のようであった。


 ここは商人に金、物が行き交うまさに商業が盛んなコーゲンミョウラクの西部。このような大きな倉庫があってもおかしくはない。しかし、それよりも気になるのは──


 「これは小麦粉、か?」


 彼の視界の中では白い煙のようなモノがずっと漂っていた。どうやらアイギパーンが吹っ飛ばされてここに来た時に、何処かの木箱から漏れ出てきたのか。小麦粉が空気中に散っている。


 「こんな所で銃なんか使っちまったら──」


 と思ったその時。


 「いいや、違うな」


 俺はシリウスが逃げれる時間さえ稼げればそれで良い。


 ギタブル・へティトは正真正銘の神獣。何度も倒しても立ち上がってくるだろう。そんな化け物を自分が殺せるわけがない。


 だからこそ、この禁断とも呼べる一手を使う。


 骨が折れているのか、動かすたびに痛む体を無理やり動かし、倉庫にある物を確認していく。やはり木箱全てには小麦粉の入った袋が詰まっていた。こんなに小麦粉があるのもおかしい気もするが、仙国は世界で人口が最も多い国。国民の腹を満たすための小麦粉と考えればこれはおかしくないのかもしれない。


 どんどん小麦粉を開けて、倉庫いっぱいにさらに小麦粉を充満させていく。


 さぁ、準備も覚悟も出来た。


 「さぁ、来いよ。バカサソリがァ!!」


 倉庫の外から聞こえていた地響きが止まり、ジャキンッ!という音と共に屋根が崩壊する。きっとギタブル・へティトが巨大なはさみで斬り落としたのだろう。


 もうすぐそこにいる。であれば──


 「じゃあな、シリウス。生きろ!!」


 トリガーを引き、銃を放つ。その瞬間、倉庫が凄まじい爆発が発生する。

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