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刃の厄災 18

 しかし、厄災の攻撃は止まらない。


 左の剣で薙ぎ払っている間、降り下ろしたことで地面に突き刺さっていた右手の剣を引き抜いていた。そして、左の剣を避けられた直後に、右手に持った剣で連撃を行う。


 今度は、下から上への斬り上げだ。


 「ちぃッ!」


 これも間一髪で躱していくミトラ。


 しかしながら、刃の厄災は何度も、何度も、何度も!右と左、交互に攻撃を行うことでカウンターを入れる暇を決して与えてはくれないのであった。


 (体が縮んで攻撃の重みが減ったぶん、スピードが増しているわね。反撃の隙も無い。だったら、一旦、距離を取るべきね!)


 そのように思考し、判断したミトラはすぐさまバックステップで後方に下がっていく。しかし、それに合わせて厄災もまた前へと進み、追撃を行う。


 「隙は絶対に与えんぞ!!」


 さらに、厄災のスピードはアップしていく。


 「は、速い!」


 さすがに体が追いつけなくなってきたそのとき


 カァン!と硬い何か……鉄と鉄がぶつかるような、そんな高い音が響く。


 それは、厄災の攻撃がはじかれた音。


 それは、アナーヒターの展開したバリアであった。


 刃の厄災も、警戒はしていた。


 彼女は術聖。しかし、いくつものバフをミトラへとかけているこの状況。確実に魔力消費も半端なものではなく、また自分の攻撃を防御するほどの魔術ならば、上級レベルの魔術でないと不可能。


 現在進行で十を超える魔術の維持。それだけでかなりの脳のリソースを使っているはず。


 なのにも関わらず―


 (我の速度を見切ったうえで、無詠唱の上級レベルの魔術発動か!?)


 まさに、術士としての極致。


 バリアを展開されることは予測していた。だが、詠唱を行うと思っていたため、今回一撃を防がれるとは思っていなかった。ゆえに厄災は大きく態勢を崩し、連撃が停止する。


 そして、その機会を彼女は逃さない。


 (剣術を発動させる時間はない。でも、バフのかかっているうえ、相手の魔力量、パワーは確実に落ちているのなら―!)


 魔力を込めたその重く、鋭い突きは、


 「ッ!!」


 厄災の鎧を破壊し、胴体を貫き、背中から剣先が飛び出る。


 剣を引き抜き、再度、攻撃が来る。


 そのように判断した刃の厄災は、すぐさま両手に持っていた剣を捨て、自分の体に刺さっている剣を鷲掴みして引き抜かれないように腕に力を入れる。


 だが、その予想は外れる。


 「絶大剣術」


 (このタイミングでか!!)


 詠唱開始と共に、慌てて自分から剣を引き抜こうとする。が―


 「〈エナジー・エラプション〉!」


 刃を中心に、彼女の魔力が水流の如き勢いで放出される。


 見た目は何ともない。だが、感覚としてはどんどん体が膨れ上がり、耐えきれなくなっていくのが分かる。まるで、水を入れすぎた水風船のように。


 (ミトラの魔力が、我の体内で放出し続けている!)


 どんどん体内のものが掻き乱され、ダメージを負っていくのが分かる。


 この世の生命とはかけ離れている厄災には臓器はなく、血液なども巡っていない。だが、彼もまた生きているのは事実。


 「ッァ、オぁ!」


 口の中から、真っ黒な液体が噴水のように飛び出る。


 自分でも分からない、体の中にあった黒い液体。


 だが、明らかに体が異常を起こしていることだけが、事実としてそこにあった。

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