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ダイモン 36

 ただの魔獣ではない、神々を処刑していた神獣であるギタブル・ヘティトは人と変わらないほど複雑な思考を頭の中で行っていた。


 あの弾丸は甲殻を貫いて来た。というのに、先ほどの二発は甲殻にヒビを入れる所か、一切ダメージを与えることは出来なかった。


 威力のある弾丸と、無い弾丸。一体、アイギパーンの目的は何なのだろうか?


 分からない。


 意図が読めないからこそ、ギタブル・へティトの動きがより鈍る。


 防御するべきなのか?攻撃していくべきなのか?それとも──


 だが、そのように考えている中、アイギパーンは動き続ける。


 そのままライフルを連射しながら、巨大な体の腹部の下へと滑り込む。ここならはさみも、毒針のついた尾も届かない。やはり敵のふところというのは大抵、安全地帯になっているモノだ。


 「うげぇ、気持ち悪いな」


 神獣とは言え、見た目は巨大なさそり。虫の裏側なんて、大抵の人は見たくないモノだろう。


 (ちょうど最後の一発!)

 

 時間をかけて充分な魔力量を弾丸に送る。弾丸の発射される部分であり、魔鉱石であるテラチウムで作られた弾頭が魔力に影響して赤く輝き始める。


 ギタブル・へティトは真下に潜られた事に気づいていないのか、周囲を見渡しているようで大きく動くことは無い。こんなに目標箇所が狙いやすいことはない。


 その集中力と込めた魔力量は先ほどの比ではない。ここで魔力切れを起こす覚悟でアイギパーンは弾丸に魔力を送り続ける。そして深く集中し、スーっ、と深呼吸し息を吐く。


 準備は出来た、あとは覚悟だけ。


 「これで、どうだッ!!!!!」


 トリガーを思いっきり引く。その瞬間銃口から凄まじい爆音と、体が吹っ飛ぶような反動がアイギパーンに襲いかかる。


 大きく態勢を崩し、体が地面に叩きつけられる。また魔力を引き出しすぎた事で、魔力切れになることは無かった。が、魔力が上手く魂から生成することが出来ない。魔力の纏われていない無防備な体、その全身が衝撃と地面にぶつかった痛みに襲われる。だが、彼の表情は決して苦しそうなモノではなく、手応えを感じている笑みの表情であった。


 弾丸は空気の壁を越え、ソニックブームを起こし、それは狙っていた場所へと着弾する。


 それは弱点だと思っていた、甲殻のない関節の位置。しかし、ただの関節ではない。あの鬱陶しい、巨大な鋏と胴体の間にある関節だ。


 そこにギラギラと輝く弾丸は着弾する。


 「ッ!!!!!!!!」


 やはり、痛みを感じている。こんな小さな弾丸でも、煩わしいと思ってくれるのであれば嬉しい事だ。


 だが、アイギパーンの目的は痛みを与えることではない。


 魔力による遠隔操作を彼は行う。


 「炸裂弾、発動!!」


 と叫んだ直後、ドォンッ!!!!と強い爆発音と共に、着弾箇所が破裂する。

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