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ダイモン 35

 充分な量の魔力を送られた弾丸もとい、テラチウムは魔力によって赤く光り輝き始める。そしてトリガーを思いっきり引くと、それはまさに音速を出して銃口から放たれる。


 「くッ!」


 射撃時の反動はまさに通常の数倍であり、凄まじいほど腕が痺れる。また体が大きくのけぞり、態勢が崩れかかるがそれを必死に耐える。


 これほどの威力であるため、ギタブル・へティトにちゃんと弾丸が当たるかよりも、銃口が衝撃でぶっ壊れていないのかが心配になり、目視と手で慌てて確認する問題なさそうだ。


 その間にも弾丸は空気の壁を突破し、ソニックブームを生み出してギタブル・へティトの外骨格である甲殻へと到達する。


 何度、撃っても弾丸をはじいていたあの甲殻も、今回、集中して放った本気の弾丸を防ぐことは出来なかったようだ。ガキンッ!と甲殻を貫き、肉へと到達する。


 「ッ!!!!!!!!!!」


 声帯が無いようで声は出ない。しかし、声にもならない叫びをあげてギタブル・へティトは怯む。またひび割れた甲殻から多少の血が噴き出る。だが、すぐに巨大なはさみでアイギパーンに向けて攻撃を仕掛ける。大きくはさみを開け、その鋭い刃でジョキジョキと斬りかかる。


 それを飛んだり跳ねたり、時にはしゃがんで避けてながら地面を駆けて弱点であろう関節部を狙いやすい位置へと移動していく。またその最中、ライフルのレバーをくるりと回し、排莢する。


 このライフルの装弾数は七発。そして切り札である試作段階の、あの弾丸は最後に入れた。そして現在、一発弾丸を放った状態だ。つまり、切り札を出すにはあと五発放たないといけない。


 (この五発であのクソサソリを誘導してやる!)


 ライフルを持ち直し、狙いを定める。


 痛みと怒りで暴れるように攻撃していたギタブル・へティトの動きが一瞬だけ、強張る。


 あんな小さな弾丸の攻撃なんてギタブル・へティトの巨大な体で考えるならば、きっと人で言うところの紙で指を切ったようなモノだろう。致命傷どころか、心配するほどの傷ではない。それでも紙で指は切りたくは無い。痛いし、血も出るからだ。それは神獣であるギタブル・へティトでも同じのようだ。


 だが、あれほど充分な魔力を弾丸に込めるような時間はない。


 先ほどに比べてダァンッ!と軽い音と共に銃口から弾丸が発射される。やはり威力も、速度も見るからに落ちている。防御するまでもなく、その弾丸は甲殻で簡単にはじかれてしまう。


 だが、アイギパーンにとってはこれで良い。


 一秒でも動きが止まってくれさえすればそれで良かったのだ。


 片手でレバーをくるりと回し排莢しながら再び走り始め、また片手でライフルを撃つ。今回は走りながらというのもあり、弾丸はちゃんとギタブル・ヘティトの甲殻に着弾はするのだが、それははさみの先とかいうより変な個所に当たる。

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