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ダイモン 34

 ギタブル・へティトの両鋏りょうばさみの根は甲殻で覆われていない。毒針が先にある尻尾も同様だ。むちのようにしならせているが、実際はいくつかの関節によって構成されている。尻尾の方が弱点が多い。腹部の方もいくつかの関節部分が見える。


 (良し、倒せる可能性は見えてきた。あとは手段だけだな)


 アイギパーンは自慢の武器であるライフルと弾丸を見る。


 本来、弾丸は鉄や銅によって構成されており、そこに発射のために雷管と火薬が詰まっている。が、鉄や銅だと魔鉱石よりも魔力伝導率が低い。魔鉱石で作られた剣や槍のような魔具には一歩劣る。魔鉱石を弾丸のような小さく加工する技術は無く、あっても大量生産出来るほどの技術はこの世界にはない。


 だが、アイギパーンの使う弾丸は違う。今手にある弾丸は、彼が生み出した特殊加工技術によって作った魔鉱石の弾丸、しかも魔鉱石の中でも硬度があり、衝撃にも強いテラチウムという魔鉱石を使っている。それはアダマンタイトの魔具に負けない威力を誇る。


 だが、それも規格外の相手には通用しない。


 こんな小さい弾丸をあの巨体の関節部分に撃ち込んだからと言ってどうなるというのか?


 いいや、他にも手段はあるはずだ。


 「そうだ、俺が新しく考えたこの弾丸……まだ開発途中だったが、使えるか?」


 そうしてポケットから取り出したのは一つの弾丸。見た目は通常弾と何も変わらない。しかし、確実に他の弾丸とは違う効果を持っているのを製作者であるアイギパーンは知っている。


 しかし、これで倒せなかったら?


 試作段階の弾丸が上手く発動しなかったら?


 そうこう考えていると、瓦礫の外から激しい音が響く。


 どうやら見つけ出して殺すよりも、とにかく暴れて隠れているアイギパーンを押し潰すように作戦をシフトしたようだ。巨大なはさみをやたらめったら地面に叩きつけ、尻尾を振り回し建物をさらに破壊していく。


 このまま隠れ続けても、あの攻撃に巻き込まれてしまうのも時間の問題だ。


 もう毒の雨は降っていない。


 考えている時間もない。


 アイギパーンは全弾リロードしたライフルから一発だけ抜き、試作段階であり、切り札の弾丸を入れると構えて瓦礫の下から飛び出す。ギタブル・へティトからしたら人間などありのように小さく感じるのだろう。すぐにはアイギパーンに気づくことはない。であれば、それも僥倖ぎょうこうだ。


 やはり運はこちらに味方してくれている!


 冷静に狙いを定めて、込めた弾丸に魔力を送る。


 戦闘中は相手の攻撃を避けながら、弾丸に魔力を込めて、とにかく外れないように狙うという、まさに経験と慣れ、そして才能が無ければ脳がパンクしてしまいそうな動きをしている。そのため、込める魔力量は充分ではなく、外れることは無いが狙う位置からも大幅にずれることもある。


 だが、今は違う。


 落ち着いて、丁寧に狙いを定める。そしてゆっくりと魔力を生成し、弾丸に送っていく。

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