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ダイモン 31

 分析の終えたシリウスは低級レベルの治癒魔術で体全身を癒しながら、ハニエルの分身を観察する。


 弾丸によってダメージを受けた右頬と右目は回復していない。いいや、脳天にぶち抜いた個所も、脚も、心臓にも弾丸の痕が残っており、血が流れている。弾痕を癒せすほどの治癒魔術は上級レベルじゃないと無理だという事を考えれば、やはり奴は中級までしか使えないと見える。


 また、杖を振り回すだけでは勝てない相手と思ったのだろう。ハニエルの分身は杖を構えてジッとシリウスが動き出すのを待っている。


 「私から……来いという、ことか」


 複雑な思考を出来ない分身だからこそ、シリウスの動きを予測するのではなく、シリウスの攻撃を見てから動くように作戦をシフトしたのだろう。


 「だったら、ちょっと準備……するか」


 そうしてシリウスは右手に持った拳銃をリロードし始め、また左手に予備のナイフを持って構える。


 「良し、準備おっけー。行きます…か!」


 脚に魔力を込め、一気に地面を蹴り上げると真っすぐにハニエルに向かって飛び出していく。それに対しハニエルはシリウスを翻弄するように左右に動きながら、杖に魔力を纏わせている。どうやらシリウスの攻撃を避けてカウンターを仕掛ける気のようだ。


 やはり分身とはいえ、基礎能力がシリウスよりも高いからか。翻弄する動きはシリウスよりも速く、またそれは彼女の動体視力では認識出来ないほどであった。


 だが、こんな事、シリウスは予測出来ていないわけがない。


 シリウスはナイフが届くほどの至近距離まで詰めるとナイフを持つ左手と腕に力が入り、それで筋肉が縮む。それを分身は見ていた。ナイフの方へと注視していつでも避けれるように、かつカウンターで杖を振り下ろせるようにしていた。


 だからこそ


 (この攻撃は……当たる!)


 右手に持った拳銃を素早く構えてトリガーを引く。


 複雑な行動、思考を分身は出来ない。だからこそ、こんな簡単なフェイクに騙される。さらにこれほどの至近距離だ。弾丸を眼で捉える事も、避ける事も出来ない。


 発射された弾丸は左目を撃ち抜かれ、とうとう両目が無くなり、視界が消滅する。


 「ッあァ!!」


 それでも、最後の抵抗として分身は無詠唱、無魔法陣で中級レベルの魔術を発動させる。持っていた杖を中心にぐるぐると風が渦巻き始め、空気を搔き乱していく。そして、その杖をシリウスの居るであろう方向へと振り下ろす。


 だが、シリウスはそれを軽々しく避ける。


 「くッ!?」


 やはり、無詠唱、無魔法陣では脳の負担が大きいようで鼻や口、耳と言った場所から一気に血が噴き出る。


 そこにシリウスは弾丸を撃ち込み、追撃を入れる。


 「ッ!くッ、あァ!!」


 ダメージの大きい頭に向かって何発も、何発も入れ込む。だが、人ではないからか。すぐに倒れる事はなかった。本来であれば、倒れるどころか、もう既に死んでいてもおかしくはないというのに。

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