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ダイモン 29

 アイギパーンもまた、ナイフと拳銃を取り出し、戦闘態勢を立て直す。


 自分が諦めてしまうほどの危険を脱却した安堵と、シリウスと合流する事が出来た嬉しさで気づいていなかったが、どうやら一部、体の骨が骨折しているようだ。医者ではないため、正確に何処の骨が?とは答えられないが、経験や痛みを感じる位置からして肋骨の辺りと腰の辺りの二箇所だ。


 エルフは魔術に長けた種族。実際、エルフ族単一国家であるセレシアは魔術実力主義であり、セレシア政府もまた魔術の実力重視の社会作りをしている。


 しかし、シリウスは違う。


 彼女は魔術の才能がなかった。魔力量も少なく、中級程度で脳の負担が耐えきれないという、エルフの中でも最低の方。まさに奴隷の身になってしまう可能性もあるほどの実力しかない。


 治癒魔術が施されている羊皮紙はある。あと数回使いまわしても問題はないだろう。だが、広げて魔力を魔法陣に送って……なんてしている時間はない。


 体を動かそうとすると激痛が奔る。だが──


 「問題はない!」


 アイギパーンの瞳の中には、もう諦めや迷いと言った負の感情はもう無く、一人の戦士がそこには居た。


 闘志のあるその眼の先には神獣ギタブル・へティトへと向いていた。


 ギタブル・へティトもまた尾を引っ込め、しかしいつでもむちのように放たられるように準備していた。巨大なはさみもまた、すぐに切断出来るように、開けて構えている。


 だが、敵はギタブル・へティトだけではない。


 ゆらゆらと揺らめく影があった。それはハニエルの分身である。


 「アイツはシリウスに任せる。俺はデカさそりの方を始末する」


 アイギパーンの言葉にこくり、と頷いて反応する。そして二人は同時に走り出す。シリウスはハニエルの分身へと。アイギパーンはギタブル・ヘティトに向かって。それに合わせるような形で敵もまた動き出す。


 杖を構えて、とてつもない速度で距離を詰めてくるハニエルの分身に向かってシリウスは狙いを定めて的確に弾丸を放つ。


 ハニエルは魔力を身体に膜のように纏うことでその弾丸を防ごうとするのだが、その魔力の膜を突き破り、身体に直撃する。しかし、威力が弱まっているようで貫通することはなかった。


 弾丸が体内に残る。それは出血量は減るが、同時に身体を動かす度に激痛が奔るかせになる。だが影分身であるハニエルに痛みというモノはないようで、ダメージに怯むことなくシリウスに向かって走り続ける。


 (止まら、ない…のか!?)


 何度も、何度も身体のあちこちに弾丸を撃ち込む。


 そこは脚、しかし速度は落ちない。


 心臓、しかし思った以上の血が出ない。


 頭、脳天に撃ち込んでいるが死ぬことはない。

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