ダイモン 25
アイギパーンの的確に放った弾丸はカニバル・ワーム達の脳天をしっかり直撃し、倒れていく。だが、どんどんハニエルの足元に広がる影から新たなカニバル・ワームが現れ、アイギパーンに襲いかかってくる。
(影から生まれた使い魔とは言え、体の構造はそのままなのか)
そのように思考しながらも、素早くチェンバーを振って開き、リロードを行うとまた的確に弾丸でカニバル・ワーム達を撃ち殺していく。
死体たちは数秒のうちは体を保っていたが、そのうち体が黒く濁り始め、まるで泥のようになって地面に溶けていった。やはり死んだモノは影になって戻っていくようだ。
「チっ、全部撃ち殺されちまなァ。ったく、これじゃあまるで芸だな」
このまま物量で押し切ることは出来ないと悟ったハニエルは新たなカニバル・ワームを出すのをやめ、そこから影をさらに巨大化させる。ハニエルを中心に影はどんどん大きくなっていき、二メートル、三メートルとまるで植物の根のように地面に広がっていく。
「今度はなんだ!?」
その影はアイギパーンの足元まで到達し、彼を超えて広がっていく。どうやら路地裏をも超えて表通りの方にまで行っているようだ。 遠くの方から慌ただしく、混乱した声が響く。
「ローリィの奴がもうデカデカと動いてるんだ。本国も仙国との戦争準備は終えている。必ず殺さなければならない目標も目の前にいる。ここでテメェを確実に殺せば、問題ない!」
ズズズ、と影の中から何かが這い上がってくる。
それは街を覆うほどの巨体。
アイギパーンは何かまずい、と察して急いで走り逃げようとする。
「逃すかよ!」
そうして追いかけてくるのは、もう一人のハニエル。先ほど見せつけるように出現させていた影の分身だ。きっと絶好の機会を伺い、何処かで隠れてさせ待機させておいたのだろう。
ハニエル本人はその場から一切動かず、使い魔の召喚に集中している。
「さぁ、来い!俺の最高戦力!!」
そうして影の中から来たのは、巨大な鋏。それは大きさ通りの重量があるのだろう。舗装された地面が重みで粉々に砕けていく。また真下で逃げ惑っていた人々も石畳の地面と共に、原型の無い肉塊へとなっていく。
次に出てきたのは、硬い甲殻で覆われた胴体。やはり鋏がデカいのだ、その体もまさに巨体。そして甲殻はまさに鉄のような硬度を持っているようだ。太陽の光を鋭く反射させ、あらゆる刃物が無価値のように感じる迫力であった。
最後に出てきたのは、しっぽ。先には釣り針のような鋭い針があり、また何か体液が漏れ出ている。何かしらの毒は出てきていると見て良いだろう。
「これは……ただの魔獣じゃない」
アイギパーンに嫌な汗が流れる。これほどの巨体を持つ魔獣など、ドラゴンぐらいのモノだ。いいや、きっとドラゴン以上の強さを持つ魔獣だろう。
「そうだ、これは神話の時代──神代にいたとされる神獣の一体。ギタブル・ヘティトだ!!」
そうして召喚されたギタブル・ヘティトは周囲の建物、一般人を巻き込みながらアイギパーンを殺すためにその巨体を動かし始めるのであった。




