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ダイモン 20

 右に左に、上に跳び続けて口を開けて食い千切ろうとしてくるカニバル・ワームを必死に避けていくトーゼツであった。が、避けた瞬間にはすぐに方向転換をして再びトーゼツの方へとカニバル・ワームは突撃する。それをもう一度、トーゼツは躱していく。


 もちろん、避け続けるだけでは勝つことは出来ない。トーゼツは突撃を避けて、カニバル・ワームが自分の真横をすれ違うそのタイミングに体を剣で斬り裂く。


 カニバル・ワームには声帯が無いため、痛みによる叫びなどはない。しかし、生物である以上、痛覚はある。痛みでのたうち回る。また急所を斬られた一部のカニバル・ワームはそのまま動かなくなっていく。


 上手く対処出来ている。それでも、トーゼツの中では大きな焦りのようなモノがあった。


 (この路地は狭いし、敵が多すぎる!このカニバル・ワームを倒すことが出来たとしても、あのエルフはまた何かを出してくるだろうし、やっぱり一度、退散したいところだな!)


 そのように冷静に考えていると──


 「ッ!」


 少し掠ってしまったのか、腕に大きな傷……肉が抉られていた。跡からしてカニバル・ワームに食い千切られたのだろう。


 また、そこでトーゼツは気づく。自分の体が血まみれであることに。どうやら治癒魔術で塞いでいた傷が開き始めたようだ。またどくどくと熱く、真っ赤なモノが体を伝って地面に落ちていく。


 「はぁ……はぁ……!」


 人間の体、脳というのは面白いモノで、気づかない内は体は動く。だが、自分の体が限界であると気づいたその瞬間に、動きは鈍くなってしまう。


 浅い呼吸で何度も肺の酸素を入れ替え、それでも体は落ち着くことはない。


 足にもう力が入らない。がくり、と膝が折れ曲がり、地面に倒れそうになる。


 カニバル・ワームの動きは止まり、エルフの少年がトーゼツの前へと立つ。


 「終わりだな、トーゼツ・サンキライ。お前が本物か、偽物かは知らねェが良い戦いだったよ。さて、そのまま出血多量で眠ると良いぜ。なに、殺しはしない。色々と話も聞きてェ所だし、生かしてそのままメイガス・ユニオンに連れて帰ってやるよ」


 ダメだ、意識が朦朧としている。


 目の前にいる相手の声さえも、聞こえない。


 トーゼツ・サンキライの……体を…神の選ば………暴く────


 何を、言っているんだ?


 俺は、何をしているんだ?


 ダメだ、意識を保て。


 戦い続けろ。


 握った剣を、振り上げろ。


 しかし、力が入らない。


 もう聴力だけではなく、視界もぼやけてくる。


 もう、寝てしまおう。


 そう、トーゼツは思った。その時──


 「絶大剣術〈ケレリタス〉!」


 鋭い光がトーゼツの後方から奔って来たかと思えば、カニバル・ワーム全部を引き裂き、エルフの少年の体も斬られていく。


 「こ、れは──」


 エルフの少年は何が起こったのか、困惑したがすぐさま意識を切り替え、トーゼツの居た方を見る。


 「ちッ、逃げられたか……!」


 そこに既にトーゼツはなく、しかし逃げたと思われる方向に血が点々と落ちていた。

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