ダイモン 13
場面は再び戻り、アニとシリウスは魔獣化した猫や犬、それだけではなくスライムやゴブリンといった魔物と戦っていた。
「相手が…多すぎ、る!」
そのように言いながらもシリウスは自分に向かってくる敵全てに対し、見事、的確に銃弾を当て殺していく。アニは変わらず武器も持たず、魔法も使わず、魔物達を触れることなく、まるで紙をくしゃくしゃに丸め込むように潰していく。
「ちぃっ、どういう仕組みだ?魔術……じゃ無ェな。だったら、固有技能か?いいや、そもそも魔力を使っているわけでもなさそうだ」
そのように思考しているエルフの少年の歪なほどに足元から地面に伸びる影から、ズズズと這い出てくるナニカ。それはアニとシリウスが相手にしている魔獣や魔物であった。
「ったく、どういう力だよ、アレは」
これでも俺はメイガス・ユニオンの魔術師。多くの固有技能、魔術を研究してきた。だからこそ分かる。あれはこの世界の法則に当てはまるような力じゃない。
であれば──
「|外界の者〈アウトレンジャー〉かよ!くそっ、だりぃ相手だな!」
アイツらは余裕で世界の法則を歪めてくる。まさに人智の外……いいや、人であろうと神であろうと、この世界から生まれ落ちた者では決して理解出来ない領域の力を使ってくる。
だが、それでも奴らは『人』。外界の者の力にも限界はある。
その証明に自分がやられていない。触れずに、ぐしゃぐしゃに丸め込めるというのに自分は無傷だ。それはきっと不可能だから。他にも可能性としては遊んでいたり、手加減しているというのも捨てきれない。が、その可能性は今のところ高い。であればまだ勝率はある。
「物量で押し切ってやるぜ!!」
少年はさらに影に魔力を送る。さらに影が伸びる。そこから一斉に、まるで津波のように多くの魔獣が生み出され、アニに向かって流れ込む。
シリウスは銃では対処出来ないと思い、魔力を用いて自分を守るようにドーム型のバリアを展開する。それに対し、アニは嬉しそうな、屈託のない笑顔でその魔獣の津波を眺めていた。
「へぇ!私と似たような事が出来るんだぁ!でも──」
アニは魔力を生成すると、空中に魔力で魔法陣を描く。そして、魔法陣に魔力を送り込むと、そこから一つの炎が生まれ、放出される。そして、影の魔獣たちにぶつかったその瞬間、大きな爆音と共に巨大な熱が周囲に広がっていく。そして魔獣たちは溶けていき、元の姿……黒い影へと戻る。
シリウスは展開していたバリアによってその熱から助かるが、この攻撃を予測していなかったエルフの少年は諸にその熱を受けてしまう。
「ッ!」
服や髪が熱によって燃え始め、凄まじい激痛が襲いかかる。呼吸するだけで肺が火傷してしまいそうだ。息を止めて、すぐさま痛覚遮断系の魔術を無詠唱、夢魔法事運で用いると同時に、下級魔術を発動させ空気中の水分を集める。それで液状化させた水を作り出すと、それで炎を全て鎮火させる。




