ダイモン 12
「──なるほど、そういう事ね」
アナーヒターはとトーゼツは冒険者ギルドへと戻ってきており、人になるべき聞かれないように隅っこにあった椅子に座って話していた。
「アイギパーンの奴が、ねぇ」
「今回は俺たちとは関係ないし、変に介入する必要はないよな。それよりも、アナーヒターの手に入れた情報って一体、何だ?無視出来ない情報とか言ってたけど……」
「十五の厄災に関する話よ、トーゼツ。現在、世界で発見されている厄災の数は分かってる?」
「えっと、討伐終わってるのが刃、死、暴力、憤怒、嫉妬、怠惰。んで、例外に支配の厄災。残存しているのが色欲、槍、魔の五つのはずだ。残りの厄災はまだ確認されていないはず」
この確認されていない厄災というのにはいくつかの説がある。
実は厄災は十五もない説。歴史に残っていないだけで誰かが倒した説。そして、説の中でも最も有力とされているのが、人のいない地にいるという説である。
この星には人類未到の地がまだ数多く残されている。人間の力では耐えきれない水圧の底である深海、世界の果てであり、極寒の地である北極、ドラゴンやフェニックスといった伝説級の魔物が住む霊峰。そのような人のいない地に発見されていない残りの厄災がいると考えている。
「ええ、その通りよ。そして、そのうち二つの厄災が仙国に居るとしたら?」
「……なるほど、そういうことか」
サルワは厄災の力を同化させることで自身を強化しているのは分かっている。そんな彼女は現在、支配、憤怒、刃、死という四つの厄災を既に自分の力にしている。それでもなお、最強の冒険者こと、神代の終末者であるアナトに届かず、神代最後の英雄であり、神の血を引くアムシャに勝てなかった。
そんなサルワの次に取る行動は分かる。
更なる自身の強化、つまり厄災討伐して自分の糧にする事だ。
「何処に居るか、分からないし本当かどうかも怪しい。でも、無視出来ない情報だな」
「でしょ?だからここからは厄災捜索になるんだけど……その前にアイギパーンの件なんだけど、ちょっと無視出来ないかも」
「どういうことだ?」
「アイギパーンがメイガス・ユニオンから狙われていると言うことは、もしかしたら奴らの情報を持っている可能性がある。私たちの敵は厄災関連相手だけじゃない。メイガス・ユニオンの動向も注意しないといけないし、アイギパーンの強さは四大聖に並ぶ。私たちも戦力増強しないといけないわけだし、仲間にならないとしても保護していた方が良いわ」
「そしたらローリィ達と戦うことになるわけだが……」
「どうせ『同盟』。仲間じゃないんだから、別に良いでしょ」
「だな、んじゃ行くか」
そうしてアナーヒターは杖を、トーゼツは指輪の力で空間に穴を開けて槍と取り出す。各々の武器を持って二人は冒険者ギルドを出る。アイギパーンを助け出すために。




