ダイモン 9
トーゼツは思考を巡らせ、ローリィに更に質問をしようとする。だが、彼女が正直に答えてくれるかどうかも分からない。
これほど優しく、素直に答えてくれているから忘れてしまいそうだが彼女との関係はあくまで同盟。つまり、味方でもなければ、トーゼツの仲間というわけではない。利害が一致していたから、という関係性に過ぎない。何なら今までの言葉も全てが真実とも言えないだろう。
何が嘘で、何が本当なのか。そこをトーゼツは見極めなければならない。
改めて聞いた情報を頭の中で整理させていると
「どうしてこんな所にいるのかと思ったら──チャミュエル・ローリィじゃないか。どうしてお前みたいな奴がここにいるんだ?」
大通りの方から路地裏に入ってきて二人に話しかけて来るのはアナーヒターであった。
「トーゼツだけではないと思っていましたが……アナタもいましたか」
「剣聖ミトラもここに来ているぞ。ったく、どうしてダイモンのアンタがここに居るの?ダイモンはメイガス・ユニオンの知識と、素体の才能、そして運命によって生まれた最高傑作。その存在、研究を門外不出のモノにしているから相当な理由が無い限り、国から出る事は無いと思うんだけどな。アンタが出張って来るほど人材不足しているのか?」
そこでトーゼツは思い出す。アナーヒターはセレシア出身のエルフ、しかも過去にはメイガス・ユニオンに所属していたという。であれば、彼女ならばダイモンについて何かしら知っているのかもしれない。
「確かに、アナタの言う通り、人材は不足していますね。神都崩壊時に送ったメイガス・ユニオンの実動部隊もまた壊滅しましたから。今、残っている魔術時は研究者の方が多いです。しかし、私がここに来ているのはそれだけが理由ではありません。トーゼツにはもう話しましたが、メイガス・ユニオンの方針が大きく変わったのですよ。同じ話をするのも無駄だと思いますので、詳しい事が知りたいならばトーゼツから聞いてください」
そう言ってローリィは歩き出し、路地から出ようとする。
「今回の任務はアナタたちには関係なく、迷惑を被るものでもないでしょう。アナタ達が仙国にいるのも気になりますが──今はどうでも良い。私はアイギパーンを探しに行きます。それではまた何処かで」
そうしてローリィは立ち去ってしまう。
「……メイガス・ユニオンが仙国に潜入しているとはね。しかも、あのチャミュエル・ローリィが」
「ああ、俺もアイツを冒険者ギルドで見た時はビックリしたぜ。ところで、何か良い情報は手に入ったか?」
「うーん、良いかどうかは分からないけど、無視できない程度の情報はあったわ。トーゼツの方もどうしてローリィがいるか、説明して貰おうか」
そうして二人は路地に出て、歩きながら情報交換を行い始めるのであった。




