ダイモン 8
その後、ローリィはあちこちからアイギパーンの目撃情報を集めた。世界中に潜入しているメイガス・ユニオンのメンバーや、冒険者を偽ることで敵対組織である冒険者ギルドで聞き込みを行った。
その結果、アイギパーンは仙国に逃げ込んだという情報を掴んだことで、ローリィはそのまま冒険者と名乗ってセレシアの仮想敵国である仙国へと入国した……。
「なるほど、それでここにお前がいるのか。そこは分かったけど……気になる所が少しあるな」
そうしてローリィから聞いた話を頭の中で整理させながら、知りたい情報を訊き出す。
「時折出ている『ダイモン』って一体、何なんだ?」
トーゼツはすぐに答えが来ると思っていたからこそ、ローリィの反応に少し驚く。
丁寧に、真摯な対応をするあのローリィが「うーん、それは……何処から何処まで──いいや、そもそも説明しても……」とぶつぶつ呟きながら、とても答えるのに戸惑っている。
メイガス・ユニオンの中でもトップシークレットレベルの情報ということか?しかし、本当に言いたくないモノであれば、名前すら出さないはず。ということは魔術学用語の可能性がある。エルフ族による魔術研究を行う組織、表ではそのような理由で設立されたのがメイガス・ユニオンだ。であれば、魔術研究の関する言葉なのかもしれない。
(アナーヒターがいれば話は早かったのかもしれないが……俺は魔術を使うが、魔術師の職はもちろん持ってないし、研究もしてないかたなぁ)
「まぁ、説明は難しんだけど簡単に説明しますけど、魔術研究、実験によって更なる強さを手に入れた魔術師と考えてくれれば問題ないです。私もダイモンとして改造されています」
「そんなモノか。それじゃあ、もう一つ質問なんだけど、ここに来てるのはローリィだけなのか?」
「いいや、もう一人、私と同じ任務を受けているダイモンがいます」
つまり、ローリィともう一人、合計二人のダイモンがアイギパーンの始末任務をしていることになるが、ここで大きくトーゼツは引っかかりを覚える。
ローリィは北方諸国の中では皆が憧れる存在であるという。その影響は冒険者で言うところの戦神アナトほどと聞いている。そして、彼女はダイモンであると明かしてくれた。そして、ダイモンがもう一人同じ任務を受けている。つまり、ローリィと同じ実力の存在が雇われ傭兵であるアイギパーン討伐に充てられているという。
それほどまでにアイギパーンの実力は凄まじいという事なのだろうか?いいや、そうは思えない。弱いわけではないのだろう。ベスと互角の勝負をしたとうのは知っている。神都侵入時にはかなり冒険者を翻弄したというのも分かっている。が、結局は捕縛されてしまっている。
アナトと同等とは思えない。それでも、張り合える程度の力はあるだろう相手が二人がかりでアイギパーン始末の任務を受けているとは思えない。




