ダイモン 5
一方、トーゼツたちは──
「うーん、結局何もなかったな」
トーゼツはメモ帳を見ながら呟く。
聞き込み自体は初日から上手くいった。というのもあの剣聖ミトラと、術聖であるアナーヒターという冒険者の中でもトップクラスの二人がいるのだ。誰も怪しがることはなく、警戒することもなかった。何なら二人がどのような魔物と戦ってきたのか?強くためにの秘訣は?と言った武勇伝やらなんやら聞くために詰め寄って来る奴らもいた。
このように、話を聞きたいのに、逆に聞かせてくれ!ということがあり、それはそれで面倒ではあったのだが、これらの要因がキッカケでギルドに出入りする冒険者のほぼ全員から話を聞くことが出来た。一応聞いた話を全部メモした。
しかし、結果は決して良いモノとは言えなかった。
黒いローブの集団も、十五の厄災関連の情報も無かった。
アナーヒターは霊霄殿の方におり、テンギョクから何か情報を得てないか聞きに向かった。ミトラは路銀稼ぎにギルドから依頼を受けて任務をこなしている。
「さて、昼過ぎには終わっちまったな。ここからどうするか──」
このままコーゲンミョウラクに居ても状況に進展はないかもしれない。だからと言って、領土広大な仙国の何処に行けば良いのか。
そう考えているところに、ギルドに新たに入って来る者の姿があった。どうせ、何も良い情報は聞けないだろうな。だけど、一応、聞きに行くか。と思い、その者に近づくのだが──
「ん!?あぁ?お、おおおおお、おぉ?お前は……!!!!」
トーゼツはその入ってきた人物が絶対にここにいるはずの無い相手だったが故に驚き、変な声をあげてしまう。また、相手もトーゼツがここに居ることに驚いている様子であった。
「マジですか、こんなところで再開するなんて……」
そこ居たのは造り物のように透き通った肌に、真っ白な無垢を表した綺麗な髪。そして両手の指全てに何かしら術が込められているのであろう指輪を嵌めている女であった。そして、冒険者ギルドと敵対しているメイガス・ユニオンのメンバーであり、仙国への入国に制限がかけられているセレシア国民。
チャミュエル・ローリィであった。
「おま、お前、えっ、えぇ?いやいや、お、おまおまおまおまおまおま」
「ちょっと外に行きましょうか」
困惑して上手く言葉が発せられないトーゼツの首根っこを掴むと、そのままズルズルと引き摺りながらギルドの外へと出る二人。そのまま人での多い通りも過ぎて、近くの人気のない路地に入る。
「さて、ここだったら安心して話が出来ますね」
「なんでお前は冷静なんだよ!?っていうか、どうしてここにいる!!冒険者じゃないだろ、アンタは!それにどうやって仙国に入国したんだ!?!」
「まぁまぁ、落ち着いてください。とりあえずここに来た経緯を話しますので」
そうしてローリィの説明が始まる。




