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ダイモン 3

 少女は諦めず拳銃で狙いを定めて魔獣と化した猫を狙う。しかし、この狭い路地裏では自分よりも小さい猫の方が素早く、多様な動きを見せて少女を翻弄していく。


 地面を四つ足で駆け抜けたかと思えば、壁を蹴り、空中を舞いながらエルフの少女に爪で攻撃をする。


 右腕の裾が千切れ、そこから血が滲み出る。


 「しゃら、くさ……い!!」


 少女は左手に持ったナイフに魔力を纏わせると強く振り回し、周囲を駆け抜ける猫を追い払う。が、それはナイフの刃に当たらないように一旦、距離を取っただけに過ぎない。油断したところを見せれば、また見切れない動きで翻弄して攻撃を開始するだろう。


 このままナイフを振り回し続けて無駄な体力を消費するのは得策とは言えない。少女は猫が距離を取ったのを確認したのちにすぐさま走り出し、その場から逃げようとする。本来であればバックステップしながら追撃してくる猫の対応をした方が良いのだろう。


 しかし、今はそのような余裕はない。彼女は背後を見せながら、ひたすら走る。


 そもそも、この路地裏という場所が圧倒的不利になっている要因である。もっと広いところで戦うことができればもっと善戦することが出来るだろう。


 しかし、猫の方がスピードが高く、ガラ空きの背後に鋭く、魔力を帯びた爪で攻撃しようとする。魔獣化しているとはいえ、元はただの猫。チーターやライオンのような動物が魔獣化していればまだしも、奴らの爪は所詮、猫の爪だ。大きさも、鋭さも、魔力を帯びているからと言って変わらない。人を一撃で殺せるほどのモノではない。


 しかし、魔獣化している今であれば、その爪は確実に皮膚を超えて肉を切り裂くだろう。


 痛覚遮断のような魔術が使えればその程度の傷、問題はないかもしれない。しかし、このエルフの少女は魔術師ではない。魔術を多少は覚えているがそれも下級程度の治癒魔術。攻撃されれば、痛みで動きは鈍り、思考は遅くなる。環境以外にも肉体的な不利も抱えることになる。


 避ける、はじく、受け止める……無理だ。全力で逃げている今、そんな余裕はない。数秒後には来るであろう痛みのことを考え、それに耐えるためにエルフの少女は歯を食い縛る。


 しかし──


 「……?」


 一向に痛みは来ない。


 なんなら、猫の追いかけて来る気配が消えている。


 少女は足を止め、後方を確認する。


 そこには、一人の女が立っていた。その女は魔術師のような格好をしており、とんがった独特の帽子を被っている。だが、それ以上に彼女の最も大きい特徴は赤と青の混じった派手な髪色と、両目に黒眼まなこは見えず、その代わり五芒星が浮かび上がっていた。


 彼女は二匹の猫のうち、爪を出して背中を攻撃しようとしていた猫を鷲掴みしていた。


 「危ないところだったね、でも、もう大丈夫」


 猫を掴んでいる手にエネルギーが生まれる。しかし、それは魔力ではない、別のナニカ。そのまま女は握る力を強め、その猫を握りつぶし、容赦無く殺す。

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