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ダイモン 2

 しばらく進んで、アニはいつのまにか首都郊外へと着いていた。


 こういう場所では人気が少ないため、犯罪者や薬物中毒者がいたり、ホームレスがうろついてうるものだ。しかし、ちゃんと行政の管理が入っているのか。多少建物が荒れてはいるが、それは人が使わないために自然風化が始まっているからであり、決して人が暴れたり、落書きがあるわけではない。


 しかし、人気が少なく寂しい場所であるというのには変わりはない。今はまだ大きめの通りだから犯罪などが見えない場所で路地裏にでも一歩、踏み入れればそこには世紀末のような世界が広がっているかもしれない。


 「ふーん、郊外のわりには綺麗だな」


 なんて言いながらアニは自分から路地裏の方へと入っていく。


 犯罪者に絡まれるのは面倒なことだが、それ以上に面白いモノも見れるかもしれない。犯罪をする頭のおかしい奴とか、薬物をやるイカれている奴は愚かで、自分の予想の斜め上の行動をする。こういう予測のつかない者は良くも悪くも面白い。側から眺めるのは飽きない、自分に火の粉が降りかかることさえ無ければの話ではあるのだが。


 昼間というのに路地裏は薄暗く、排水のために張り巡らされたパイプからはネズミのような小動物が駆け巡っていく音が聞こえて来る。ムカデやゴキブリと言った虫も目の端に映る。もうここは人の住む環境ではなく、害虫や害獣の溜まり場のようだ。


 「路地裏も何もなし、か」


 アニは来た道を引き帰そうとする。


 どうせまだトーゼツ達は冒険者ギルドだろう。あれこれ言い訳して、いくつか金を貸してもらってから美味しいご飯でも食べに行く方が楽しいだろう。


 そう思っていた時──


 「!」


 アニは何かの気配を察知する。


 これは戦いに身を置く者なら誰しもが経験のある、日常には無い気配。


 「殺し合いの匂いだね……!」


 アニはそのまま路地を奥へと突き進んでいく。



 

 右手に拳銃、左手にナイフを持って戦闘態勢を取っているのは小柄なエルフの少女。彼女は狭い路地裏を小柄な体型を活かして素早い動きで駆け抜けていく。しかし、彼女を上回るスピードで追って来る二つの黒い影があった。


 その影は地面を蹴り上げ、壁を走り、エルフの少女の前へと回り込む。


 その影の正体は、猫であった。毛は闇に染まったかのような真っ黒で、魔力を漂わせるソレはただの猫ではない。突然変異によって魔物化した猫のようであった。


 「ちぃっ、うざっ…たい……!」


 少女は弾丸に魔力を込め、引き金を引く。しかし、弾丸を軽々と避けていき、その魔力を帯びた爪で少女へと反撃を行う。少女は攻撃のタイミングを見計らい、一瞬だけ体を退かせることで猫の爪を避けようとする。のだが──


 「ッ……!」


 どうやら完全には避けきれなかったようだ。頬の皮膚が一本の線に裂かれ、そこからツー、と赤い血が流れ出る。

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