仙国 12
「テンギョクの正体はとても気になることかもしれないけど、ぶっちゃけ今は関係ないし、とりあえず明日についての話をしようぜ」
そのようなトーゼツの言葉にアニとアナーヒターの二人はテンギョクや仙人などに対する思考を一旦放棄するのであった。
「と言ってもやる事はほぼ決まってるんじゃない?」
というアニのセリフにこくり、と頷き肯定する。
「この国で何が起こるのか、分からない。けど、何かが起こるというのは分かっているんだ。あとはそれを未然に防ぐ。もしくは起きた時に対処できるようにしないといけない。そのためには、まぁ、仙国内に関する情報を集めるのが常套かな」
しかし、仙国は最も巨大な領土を持つ国。情報を集めると言ってもそれは簡単な事ではない。しかし、問題があるのは分かっているのに、それがいつ、何が起こるか分からないのだ。長い時間をかけらない。であれば──
「だったら、冒険者ギルドが一番、集めやすい場所ね」
とアナーヒターは提案する。
冒険者の中には旅をしながらギルドから依頼を受けて路銀を稼ぐ者たちも少なくない。かつてのトーゼツとアナーヒターも同様の冒険者だった。彼らのような者たちであれば、仙国の東西南北のあちこちの情報を持っているかもしれない。
「んじゃ、これから冒険者ギルドから魔物狩りなんかの任務を受けながら他の冒険者に聞き込みって感じか。あとはテンギョクの方でも動いてるみたいだし、そっちとも積極的に関わりたいかな」
とある程度、行動方針を決まったところで三人は休むことにしたのであった。
そこは霊霄殿の中、大きく絢爛な部屋、威厳のある玉座に座り、部下から上がってきた数十枚の報告書を眺めるのはテンギョクであった。そばには四方星の一人、ワンウーがいた。
「以上が上がってきた報告でございます」
「ふむ……封印しているアレらに問題はなかったか。しかし、冒険者ギルド側からの情報では封印地の周辺では魔物の発生数が多くなっているという。もしかしたら裏で黒いローブの者達が動いている可能性があるな。しかし、それよりも気になるのは──」
ぺらぺらと報告書をめくっていく。
「メイガス・ユニオンの活動が大きくなってきているな」
冒険者ギルドとは違い、セレシアが自国の利益のために作ったメイガス・ユニオンの支部、組織設置は認めていない。だが、広大な領土を持つ仙国内全ての人の出入りを確認するのはテンギョクといえど難しい。
そのうえ、セレシアとは国境線が接しており、常に軍の警備を置いているがあの手この手で侵入している。テンギョクも侵入しているメイガス・ユニオンをどうにかしなければならないと常々考えてはいるのだが──
「過去にはアイツらに助けてもらった経験もあるが、いつまでも仙国で自由に出来ると思うなよ……」




